会社研究経営者が選んだ注目銘柄(2) 信越化学工業 塩ビ強化で描く最高益 2015/01/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「会社研究経営者が選んだ注目銘柄(2) 信越化学工業 塩ビ強化で描く最高益」です。





 「あと3年は神様にお願いして生かしてもらおう」。89歳で経営の最前線に立つ信越化学工業の金川千尋会長が今、心血を注ぐ案件がある。米ルイジアナで2018年の稼働を目指し、建設中のエチレン工場だ。投資額は1700億円に上る。

 ■原料の3分の1内製化

 信越化は住宅建材などに使う塩化ビニール樹脂で世界シェア首位。原料のエチレンは外部調達してきたが工場完成後は米国で総使用量の3分の1を内製化できる。安いシェールガスを使い、塩ビ事業の稼ぐ力を高める。

 スマートフォン向けの半導体ウエハーや化粧品に使うシリコーン。多様な事業でバランス良く稼ぐ構造を作ってきた信越化が再び塩ビ強化に向かうのには、理由がある。

 16年3月期の純利益は前期比9%増の1400億円で6期連続の増益を見込む。大和証券の梅林秀光氏は「業績や財務は安定している」とみる。ただ株価は14年末比で18%安の水準で、予想PER(株価収益率)は約19倍。独BASF(13倍)や米ダウ・ケミカル(15倍)より割高だ。

 割高感を解消するには、利益成長のピッチを上げなければならない。08年3月期の最高益(純利益で1835億円)をけん引した半導体ウエハーは、スマホなどの需要に左右されやすくなった。最も確実な道は競争力がある塩ビに磨きをかけることなのだ。

 勝算はある。シェア4割弱を握る米国では住宅やインフラ向けの成長を見込み、子会社の生産能力を年295万トンと1割増やした。「塩ビと原料エチレンの値幅は1トンあたり1000ドルと歴史的な高水準」(シティグループ証券の金井孝男氏)なのも追い風だ。原料供給元のトラブルでコストが上がる今期は減益となりそうだが、来期以降は攻勢に出る態勢が整う。

 市場には2~3年後にエチレン新工場が稼働すれば「年200億円前後の増益要因になる」との見方がある。米国の底堅い需要とコスト削減で塩ビの利幅が厚くなれば「18年3月期にも最高益更新の可能性がある」(シティの金井氏)。

 競争環境は目まぐるしく変化している。化学大手の大型再編が相次ぎ、信越化も無縁ではいられない。15年には米総合化学大手ダウ・ケミカルとデュポンが経営統合で合意した。ダウは米コーニングとの合弁会社だったシリコーン首位のダウ・コーニングを完全子会社とする計画だ。シリコーンを戦略事業と位置づけ「市場をより深耕する」(ダウのアンドリュー・リバリス最高経営責任者=CEO)。シリコーンで4位の信越化は、統合で力を増すライバルとの競争にさらされる。

 ■ROEは7%どまり

 信越化は「自前でやる方が効率的」(金川会長)として再編に距離を置いてきた。営業利益率は15%と群を抜くが、自己資本の厚みが影響する自己資本利益率(ROE)は7%にとどまる。今期は7期ぶりの増配に踏み切るものの、現時点では自社株買いより成長投資を重視する姿勢を保つ。

 設立90周年にあたる今年1月4日の仕事始めに、金川会長は「100周年に向けて今後10年は意欲的に投資する」と宣言した。8千億円の手元資金を有効に活用する次の一手が重みを増す局面になってきた。

(浜岳彦)



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