会社研究 取り戻した成長力(5) カシオ計算機 アナログに切り替え人気再燃 2015/07/01 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「会社研究 取り戻した成長力(5) カシオ計算機 アナログに切り替え人気再燃」です。





 カシオ計算機の連結純利益は2015年3月期に8期ぶりの最高となり、今期も前期比25%増の330億円と記録を塗り替える見通しだ。主力の腕時計「Gショック」をデジタルからアナログに切り替えるという、時計の針を逆戻りさせたような戦略が当たった。

昨年発売のアナログ式Gショック

過去最高800万個

 「アーロンベェー ミンガラバー」(皆さん、こんにちは)

 3月にミャンマーのヤンゴンで開いたGショックの販売促進イベント。時計事業部の伊部菊雄副主管がミャンマー語で切り出すと、集まった若者らはわっと歓声を上げた。伊部氏はGショックの生みの親。世界各地の催しで必ず現地語であいさつし、開発秘話を披露する。

 Gショックの今期の出荷数は過去最高の800万個の計画。前回のブームだった1998年3月期を3割も上回るが、今の売れ筋は針と文字板で時間を示すアナログ式だ。デジタル表示とゴツゴツした独特の外観が人気を集めたかつての製品とは様変わりした。

 カシオの腕時計参入は74年。後発のためデジタル時計に電話帳や歩数計、赤外線ゲームなどを付け、他社との違いを打ち出してきた。耐衝撃性に優れたGショックもその一つ。だがGショックが爆発的に売れた90年代後半を除くと、時計事業の年商は700億円前後を行ったり来たりしていた。

 「技術先行で製品を開発してきたからだ」と時計事業部長の増田裕一取締役。たくさんの機能を詰め込んだ結果、クセの強い形となり、消費者に飽きられるのも早かったというわけだ。

 そこで04年に時計づくりを「多機能デジタル」から「高機能アナログ」に転換する。電波を効率よく受信する大規模集積回路などデジタル技術を生かしつつ、表示部分は世界市場で9割を占めるアナログ式に切り替えた。搭載する機能は消費者が求めるものに絞り込んだ。

 デザインで付加価値を高める戦略は的中する。アナログのGショックの販売先は宝飾店にも広がり、前期の時計事業全体での単価は3732円とアナログへのシフトを始めた05年3月期の1.9倍になった。同事業の売上高営業利益率は前期で21%と、同社では群を抜く。

電卓でもヒット

 時計事業の礎といえる電卓でもヒットが出ている。言語も表示できる関数電卓「CLASSWIZ」の国内向けの販売価格は従来より2割高い。中国語、アラビア語に続き、他の言語も今後、次々と投入する。70年代の猛烈な電卓競争を勝ち抜いて獲得した、世界で約90カ国にある顧客基盤をフルに活用する。

 6月まで社長を務めた樫尾和雄会長は「Gショックも電卓も競合が少ないからこそ、高い売上高営業利益率(前期で約11%)が可能になる」と明かす。27年の社長在任中には、携帯電話や中小型液晶パネルの実質撤退など苦しい選択も迫られた。事業を取捨選択し、蓄えてきた資産を上手に活用すれば成熟市場でも稼げる。それを実証したカシオの商法は、低利益率にあえぐ日本の電機産業にとって打開のヒントになる。

 和雄氏からバトンを受けた樫尾和宏新社長は次代を支える新事業の創出を担う。18年3月期までの中期経営計画では前期の倍の750億円の営業利益が目標。これを達成できれば和雄氏悲願の株式時価総額で1兆円企業が見えてくるだろう。

(中尾良平)



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