会社研究 経営者が選んだ注目銘柄(4) 信越化 塩 ビの一貫生産、米で着々 2017/1/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「会社研究 経営者が選んだ注目銘柄(4) 信越化 塩ビの一貫生産、米で着々」です。





 昨年11月の米大統領選直後、驚きと不安が世界をまだ覆っていたころ。「トランプ政権には法人税率の引き下げを期待する」。信越化学工業の斉藤恭彦社長は、機関投資家を相手にしたセミナーで言い放った。

 「歓迎コメント」とも受け取れる発言には理由がある。米国で塩ビ樹脂をつくるシンテックは、連結営業利益の2割を稼ぐ基幹子会社。会計上の税負担率は32%(2015年12月期)で、減税は競争力をさらに高める。仮に税率が15%に下がれば、純利益は70億円前後押し上げられる。

 追い風は税金面だけでない。トランプ次期米大統領が主張するインフラ投資拡大が実現すれば、塩ビ樹脂で3割のシェアを持つシンテックの受注がぐっと増える可能性がある。

 同社はいま2000億円超をかけ、米ルイジアナ工場を増強している。稼働のメドは18年。需要と供給が同時に伸びれば、利益はさらに膨らむ。製品の半分を米国内で販売するので、「米国第一主義」の政権と摩擦を起こす懸念は小さい。

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 1973年設立のシンテックは大規模投資を繰り返してきた。塩ビ樹脂だけでも13回だ。従来と違うのは主原料のエチレンを自前で生産すること。原料から塩ビ樹脂までの一貫生産体制が整えば、調達が生産を縛るくびきから逃れられる。14~15年に減益だったのは、原料購入先が生産トラブルに見舞われたからだ。

 「景気の良しあしに左右されず、自主性を持って安定成長すること」。金川千尋会長の信念を現場に落とし込むとフル生産・全量販売に行き着く。安定供給の責任を全うすれば、顧客の信頼を得られるというわけだ。実際、昨年は北米で3回の値上げを通した。

 塩ビと並ぶ主力事業で、世界シェア首位の半導体ウエハーでも本格値上げに成功し、採算改善の道筋がついた。化粧品原料のシリコーン、医薬品向けのセルロース素材、半導体部材のフォトレジストも伸びており、野村証券の岡崎茂樹アナリストは「各事業の『打ち手』がうまくはまっている」と指摘する。

 今期の営業利益は前期比8%増の2250億円の見通し。最高益は08年3月期の2871億円だ。「トランプノミクス」が米景気を後押ししたところにシンテックの新設備稼働が重なれば、数年後の記録更新が見えてくる。これを先取りして株価は上昇し、07年7月の上場来高値(9580円)更新が迫ってきた。

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 株高の持続に課題はある。前期の自己資本利益率(ROE)は7.5%。米ダウ・ケミカルの32%(15年12月期、以下同じ)、米デュポンの16%、独BASFの14%に見劣りする。自己資本比率が80%と高く、分厚い資本がROEを押し下げる要因に働いている。

 同社はムダの少ない投資でキャッシュフローを稼ぎ、それを次の投資に回して大きな見返りを得てきた。こうした好循環への市場の信頼は厚い。ならば、それを逆手にとって市場をもっと使ってはどうか。

 有利子負債を差し引いたベースでの手元資金は、前期末で8200億円もある。これを株主への利益配分強化や自社株買いに使い、ROEを10%台に乗せれば、高株価をテコにした機動的なエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)がしやすくなる。

 株式の公募増資は1980年の53億円が最後。先々の投資資金を確保しておくため、自社株買いはずっと見送ったままだ。資本市場を使いこなせる数少ない日本企業のはずなのに、もったいない。(平沢光彰)



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