会社研究 経営者が選んだ注目銘柄(4) 富士フイルム 2度目の変身、医療に軸足 2016/01/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「」です。





 「ここに患者さんに立ってもらって、このボタンを押して下さい」。昨年暮れ、トルコ北西部の医療施設。富士フイルムホールディングスの現地法人に勤める技術者のシュクランさんが、ある装置の操作方法を施設の技師に教えていた。

 これは乳がん検査などに使われるマンモグラフィー(乳房エックス線撮影検査)装置だ。富士フイルムがトルコ当局から受注した約100台のうちの1台になる。

 ■幅広い分野で稼ぐ

 2000年代初頭、富士フイルムは利益の3分の2を写真感光材料で稼いでいた。デジタルカメラの普及で市場が急速に縮小すると人員削減や合計7200億円のM&A(合併・買収)で大規模な改革に取り組んだ。

 16年3月期の営業利益は1900億円と、リーマン・ショック前に記録した最高益の92%を見込む。株式市場では変身に成功した企業のモデルケースと評されるが、今は何で稼いでいるのか。

 利益の内訳をみると写真関連部門は全体の1割だ。現在の稼ぎ頭は01年に子会社化した富士ゼロックスを中心とした事務機部門で、ほぼ半分を占める。高機能材料など産業用途・ライフサイエンス部門の利益は4割で、写真フィルムの会社から事務機を中心に産業素材などで幅広く稼ぐ会社に変身したことが分かる。

 効率性はどうか。保有資産と利益額を比較する総資産営業利益率(ROA)を部門ごとにみると事務機部門は前期実績で8.3%と最も高い。インスタントカメラ「チェキ」のヒットなどで営業赤字から復活した写真関連は、資産圧縮の効果もあり6.4%だ。

 ただ、事務機は世界的に市場が飽和し利益率を一段と高めるのは容易ではない。写真部門を拡大するにはチェキに続くヒット商品が必要だ。成長の伸び代が大きいのは医療分野を含む産業・ライフ部門になる。市場自体の成長を見込めるうえ、ROAも5%台で資産効率に改善の余地がある。

 マンモグラフィー装置は医薬品や再生医療と並び、この部門のけん引役になる製品だ。中央アジアやアフリカで「遅れていた医療インフラの整備がこれから進む」(中嶋成博社長兼最高執行責任者)と判断し、トルコだけでなくエジプトやモロッコでも医療機器の販売を強化している。東芝が売却する医療子会社の買収も検討を始めた。

 ■中計を市場が評価

 14年に発表した17年3月期までの中期経営計画は株式市場から高く評価された。自社株買いと配当で3年間で2300億円強を株主に還元し、1200億円の純利益目標は1年早く今期に達成できそうだ。株価は15年の年間で37%上昇した。事務機大手6社の中では断トツの値動きになる。

 医療分野の「次」も探し始めた。東京・赤坂にある本社の一角に社内の製品や技術を紹介する施設「オープンイノベーションハブ」を開設した。4月には遠隔地の顧客に動画で紹介する取り組みも始める。「新事業開拓の機会を増やす」と技術経営部の小島健嗣マネージャーは意気込む。

 大胆な事業の組み替えで株高と成長を両立した富士フイルム。今後は「事務機が安定して稼ぐうちに次の成長事業をつくれるかがポイント」(野村証券の和田木哲哉氏)になる。写真フィルムから事務機・産業素材、そして医薬品と医療機器のメーカーへ。投資家は2度目の変身に期待を寄せている。

(中尾良平)



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