保育所のナゾ(上) 待機児童ホントは何人? 100万人超の試算も 2016/03/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「保育所のナゾ(上) 待機児童ホントは何人? 100万人超の試算も」です。





 子どもを保育所に預けたくても預けられない待機児童問題。参院選の争点になることを恐れた安倍晋三政権は慌てて対策づくりに乗り出したが、そもそも保育所はなぜ足りないのか。「3つの疑問」を調べた。

待機児童対策の充実を訴える声が強まる(23日、衆院議員会館)

 「本当は認可保育所がよかったんだけど……」。2歳の娘がいる東京都の主婦、梅川奈緒子さん(37)の表情はさえない。2014年秋から預け先を探し回った。保育所の助けが要ることをアピールするために土日は子どもを夫に預けて働きにも出たが、近くの認可保育所には軒並み断られた。

 2月末にようやく見つかったのが地域の認可外保育所。ただ保育料は月4万7千円と認可保育所の月2万5千円の倍近い。結局、今でも認可保育所への転園を目指して申し込みを続けている。

 保育所に入れない待機児童は全国に何人いるのだろうか。厚生労働省の説明では昨年4月時点で2万3千人。ただここには梅川さんのような例は含まれない。2001年に待機児童の定義を変更。やむなく認可外保育所に通っていたり、特定の認可施設を希望して空きがある施設の入所を断ったりしたケースを待機児童から外したからだ。

 野党から「なぜ数字を小さくみせるのか」と追及された厚労省は昨年4月時点で「潜在的待機児童」が6万人いることを明らかにした。だがこの2つの人数を合わせた「8万3千人」という数字でさえ実態にはほど遠いとの指摘がある。

 「本当の待機児童は171万人」。民間シンクタンクの社会保障経済研究所は最近こんな試算をはじいた。これは子どもを預けて働きたい気持ちがありながらも「どうせ保育所に空きがない」と申し込んでいない人を含めた数字だ。意欲あるすべての人が働ける環境をつくる「一億総活躍」の観点に立てば、この人数こそが「潜在的待機児童」ともいえる。

 塩崎恭久厚労相は待機児童の範囲を狭くとらえて公表していることについて「緊急性の高い人を把握するため」と説明している。ただ「待機児童が膨らんで巨額の予算が必要になることを避けようとしているのではないか」(社会保障経済研究所の石川和男代表)との指摘もある。

 共働きが主流になり、保育サービスの需要はどんどん拡大している。14年度の1年間で保育受け皿は14万6千人分増えたのに、厚労省が公表する待機児童数はこの間に逆に約1800人増えた。

 仕事との両立に悩む親たちは保育所に滑り込もうと必死だ。「彼女が辞めると地元の医療は崩壊します」。東京都の30代の女性医師は上司のこんな推薦状を提出し、諦めかけていた保育所入所を勝ち取った。保育所入所の「テクニック」を指南するマザーネット(大阪市)の上田理恵子社長(54)のアドバイスが奏功した。

 政府や自治体が待機児童の実態に向き合わない限り、保育所を巡る親たちの切実なバトルはもっと過熱しかねない。



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