保護主義の防波堤に 2017/11/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「保護主義の防波堤に」です。





 世界経済の中心となった東アジアを舞台に、目に見えない陣取り競争が進んでいる。モノの貿易や投資だけでなく、経済価値の源泉となったデジタル情報を自国内に囲い込もうとする新たな保護主義との戦いだ。

 11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP)の本質がここにある。焦点は自動車や農産物などの市場開放でなく、21世紀型の通商ルールだ。情報の流れは国境を越えて自由であるべきではないか。その原則を多国間協定で定めた意義は重い。

 米トランプ政権は2国間のモノの貿易赤字額をあげて、相手国に関税撤廃を迫る。20世紀型の通商政策に回帰する米国と対照的に、日本と東南アジア各国は、情報が主役のあすの通商を見据えていた。その気づきをもたらしたのは中国だ。

 モバイル決済などでグローバルなプレーヤーはアジアでアリババ集団と騰訊控股(テンセント)くらい。いずれも自由な情報流通を遮断された「万里の長城」の内側にある中国企業である。

 その中国は6月、「インターネット安全法」を施行。ネット企業に情報提供を求める権限を政府が握る。技術革新を生むビッグデータは中国内に蓄積し、政府の管理下に置かれる。ベトナムやタイなど、デジタル保護主義のドミノ現象がアジアに広がり始めている。

 中国の「一帯一路」構想は表看板こそインフラ整備だが、TPPに対抗する経済圏づくりの通商政策でもある。電子商取引などで独自ルールを築くのも狙いの一つだ。

 ルールのひな型となるTPPは、どこまで世界に共有されるか。11カ国の経済圏は元の構想の3分の1にすぎない。空席をつくり米国の復帰を待つ期待感こそが、大筋合意の原動力だった。一帯一路に引き寄せられながらも、透明な競争による市場秩序を築きたい。浮かび上がったのは、アジア各国の本音である。

(編集委員 太田泰彦)



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