信頼されない日本のCEO編集委員 西條都夫 2017/2/28 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「信頼されない日本のCEO編集委員 西條都夫」です。





 日本の経営者にとって、衝撃的な数字が手元にある。世界有数のPR会社、米エデルマンが毎年世界28カ国で実施する「トラストバロメーター(信頼度指標)」。各国で成人1千人強を対象に「あなたは政府やメディアを信頼していますか」を尋ねる世論調査だが、その中に最高経営責任者(CEO)の信頼度についての質問もある。

 その最新の結果を国別に並べると、日本はなんと最下位で、「CEOは信頼できる」と答えた回答者はわずか18%にとどまった。

 ちなみに1位はインドの70%。米マイクロソフトやグーグルの現CEOはインド出身者であり、「優秀なCEOは国の誇り」という感覚が国民全体に共有されているのかもしれない。

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 国別の傾向を見ると、先進国では総じてCEOへの信頼度が低い。経済全体が成熟するなかで、個別の企業もリストラを迫られ、社員や社会に痛みを強いることが多い。それがCEOに対する厳しい評価につながるのだろう。ただ同じ先進国でも日本の低さは突出し、ビリから2番目のフランス(信頼度23%)と比べても5ポイントの差がある。

 なぜこれほど信用が低いのか、不思議な気もする。東芝をはじめ企業をめぐるトラブルや不祥事は絶えないが、あえて弁護すれば、CEO個人が自分の強欲を満たすために不正を主導するといった、米国流の悪質な例は少ないと感じる。

 この疑問に対する、エデルマン日本法人のロス・ローブリー社長の仮説はこうだ。「日本の経営トップが何を考え、何をしているのか、一般の社員や社会が目の当たりにする機会が諸外国に比べて少ない。このvisibility(可視性)の低さが、信頼の低さにつながっているのではないか」――。確かに露出の少ない、なじみのない人間に対して、人々が親近感を抱いたり、その人のリーダーシップに信頼を寄せたりすることはまれだろう。

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 ではどうすればいいか。おそらく「可視性」の高さで傑出する経営者の一人が日産自動車のCEO退任が決まったカルロス・ゴーン氏だ。東日本大震災の直後に、東京電力福島原発にほど近い同社いわき工場に足を運び、「この工場は必ず復興させる」とテレビカメラの前で宣言した。

 米国企業ではユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEOが「visible(よく見える)経営者」として有名だ。愛嬌(あいきょう)のある風貌で各地の空港などを回り、社員と交流する。その結果、現場のモラールが目に見えて向上し、定時就航率が大きく上昇したという。

 政治への信頼が揺らぐと、増税のような「必要だが、痛みを伴う政策」を国民が拒否するようになり、国の将来が危うくなる。それと同じく、CEOへの信頼が薄いと、経営陣がいくら改革の旗を振っても社員が呼応せず、停滞が長期化する恐れがある。今の日本企業はその落とし穴にはまってないだろうか。



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