働きかたNext 世界が問う(5) 転職「35歳」の壁壊す 職場再生へ動き出せ 2016/03/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「働きかたNext 世界が問う(5) 転職「35歳」の壁壊す 職場再生へ動き出せ」です。





 欧米に比べ人材流動化が進まない日本。転職を働き方を変える好機と捉える社会にできないか。

 「消費者と直接向き合う仕事がしたい」。ニトリホールディングスで働く瀧口哲也(41、写真)は4年前、外資系自動車会社から転職した。担当していた商品開発では消費者の顔が見えず、物足りなさが募った。30代後半の転職。不安もあったが、成長企業で挑戦したい思いが背中を押した。

 ニトリでは実際売り場に立ち、土日出勤で以前より忙しくなった。それでも瀧口は「やりがいを感じる」と満足げだ。店舗拡大を急ぐニトリは昨年32人のミドルを採用。人事担当の五十嵐明生(52)は「経験豊富な中堅人材は歓迎」と話す。

 日本の転職市場に存在した「35歳限界説」が崩れ始めた。転職サイトDODAでは転職成功者の3割が35歳以上。編集長の木下学(39)は「人材難の中堅企業を中心に求人が急増し、未経験可の事例も目立つ」と話す。

 社内にくすぶるミドルを求める中小。転職社会を引き寄せるには、その流れを太く大きくする努力が必要だ。だがニーズが合うとは限らない。

 「入社後の事をもっと考えるべきだった」。電機会社勤務の男性(39)は悔やむ。経理のスキルを生かして3年前、医療機器商社に転職した。契約は年収700万円。だが入社後に昇進して残業代が消え、業績も悪化して600万円に減った。人材紹介会社とは入社時の条件を擦り合わせただけ。結局2年で辞めた。

 給与や職種など条件を付き合わせるだけでは定着しない。大事なのは自らのスキルと求められる役割を見極めることだ。

 仏菓子店運営のペーアッシュ・パリ・ジャポン(東京・港)は昨年末、大手電機出身の50代男性を採用した。「菓子店の経験はないですが」。男性は遠慮気味だったが、製造現場の経験は豊富。「業務の効率化や若手の育成経験がある。うちで必要な人材」と社長のルデュ・リシャール(43)は強調する。通用するスキルは意外な所に眠る。

 「専門性に偏った採用がミドルと企業のミスマッチを生んだ」。人材サービス産業協議会(東京・千代田)の池目雅紀(50)は自戒を込めて話す。協議会は仕事の進め方や人柄など、どこでも通用する能力を重視するように変えた。紹介後も定着するよう目配りし、再教育も厚くする。今後は人材会社の役割も問われる。

 リクルートによると日本の平均転職回数は0.87回。米国の1.16回はおろか、アジアでも最も少ない。人口減が進む日本。人が企業の枠を超えて柔軟に移れる労働市場づくりが欠かせない。職務に応じた給与の導入や長く勤めるほど有利な退職金制度の見直し、再就職支援や転職に伴う失業対策の充実も要る。

 法政大学名誉教授の諏訪康雄(68)は「保守的だったミドルの転職を後押しすれば、日本全体が動き出す」と指摘する。働く6400万人が事情に応じて新たな働き方を自ら選ぶ。そんな社会を目指せば、日本の職場も再び輝く。

(敬称略)

=おわり



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