働く力再興 成長の原資を生かす(中) 「官製春闘」もう いらない 高度人材、脱・横並びから 2016/12/13 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「働く力再興 成長の原資を生かす(中) 「官製春闘」もういらない 高度人材、脱・横並びから」です。





 日本は政治家や官僚が企業の賃金水準を決める国なのだろうか。首相が賃上げを先導する「官製春闘」は4年も続く。首相の威光にあやかって労使が少しずつ譲り合うなれ合いでは経済の足腰は強くならない。

■同じ闘いぶり

 首相の安倍晋三(62)が11月16日、労使代表に「来年は少なくとも今年並みの賃上げを期待している」と求めると、労使は昨年と同じ前例踏襲で応じた。経団連は同22日、「年収ベースでの賃上げ」を企業に呼びかけると表明。3日後、連合も基本給を一律で引き上げるベースアップ(ベア)要求を「2%程度を基準」にすると決めた。

 例年より早く始動したぐらいで、首相要請を踏まえ労使が動き出す構図は相変わらず。これでは出る結果も今年とさして変わらなそうにみえる。政労使の話し合いはデフレに慣れ、賃上げを避ける労使の姿勢や空気を変える意義があった。景気刺激のカンフル剤にもなった。だが、このやり方は限界を迎えている。

 そもそも春季労使交渉(春闘)など労使合意が及ぶ範囲は、大企業や製造業の正社員、現業に従事する労働者などに限られる。非正規労働者は全体の約4割を占め、労働組合の組織率も17%程度に下がった。

 年功序列で少しずつ基本給やボーナスを上げ下げする仕組みでは、成果を出した人や若年層に報いきれない。優秀な人材の獲得に知恵を絞る企業と政労使の間には認識のズレがある。

 副業の自由化など社内の改革を進めるグループウエア大手のサイボウズ。従業員の賃金は「市場価値」で決める。今年度から新卒社員に数万円の差がつく給与体系を導入した。IT(情報技術)スキルの違い、内定の数などが尺度だ。担当の松川隆(44)は「納得感ある賃金体系が社員の満足度を高める」と説く。

■成果で高い報酬

 アイリスオーヤマ(仙台市)の開発者は成果がすべて。成長分野と見込む家電開発では、大手メーカーからの技術者約20人に年俸制を敷き、成果で処遇を決める。三洋電機出身の犬飼正浩(52)は加熱調理器で計画比2割増の売り上げを記録した。当たれば厚遇、売れなければ契約打ち切りの1年勝負。犬飼は「緊張感を持って目の前の仕事に取り組む」と話す。

 戦後日本企業は終身雇用を前提に年功序列型の賃金で正社員に報いた。経営が順調で温かな労使関係を維持できるなら、毎年少しずつ賃金を上げるやり方でもいい。だが、事業規模や知名度では生き残れない。民間は時間でなく成果で報いる手法に向かいつつある。

 成果が大きければ、20代の若者に高給を払ってもいいだろう。働き過ぎへの注意は必要だが、それが企業の成長への近道になる。前例踏襲の労使交渉、横並びの賃金体系では高度人材はなかなか育たない。

 政労使が話し合うべきは時代に即した労働者への報い方ではないか。一律の労働者保護では強者が伸びず、成果なくもらいすぎる悪平等も生む。賃上げの空気しかつくらない「官製春闘」は4年で打ち止めにするほうがいい。(敬称略)



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