先進国、少子化再び 2018/06/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「先進国、少子化再び」です。





先進国で少子化が再び進んでいる。2017年に主要7カ国(G7)で生まれた新生児はカナダを除く6カ国で減少し、米国は30年ぶりの低水準。G7全体の出生数は第2次世界大戦後で初めて800万人を割りこんだとみられる。米リーマン危機後の景気後退やその後の賃金低迷で出産に慎重になる人が増えた。足元では移民を制限する動きも広がっており、少子高齢化が先進国経済の重荷となる構図が強まる可能性がある。(関連記事総合4面に)

関連記事総合4面に

17年の出生数は各国の統計を合算。英国など未発表の国は月次データで推計した。女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率(総合2面きょうのことば)も16年までドイツを除き低下基調だ。

合計特殊出生率(総合2面きょうのことば

支援縮小が影響

出生数が減っている国に共通するのは晩産化だ。第1子の出産年齢が高くなると、第2子以降の子どもを産みにくくなる。日本では1980年代から進んでいたが、ほかの先進国でも広まってきた。

多くの先進国では08年のリーマン危機後の景気後退で家計の手取りが減少した。雇用情勢は世界的な景気拡大で足元で改善してきているものの、賃金は伸び悩んでいる。これが出産の減少や晩産化につながっている。

1日発表の17年の日本の出生数は94万6060人と最少を更新。出生率は1.43と前年より0.01ポイント下がった。

米国の17年の出生数は385万人にとどまった。15~44歳の女性1000人あたりでは60.2人で100年以上前にデータを取り始めてから最少。出生率は30代で下がる一方、40~44歳で上昇した。移民で人口は増えているが、危機後に出産を先延ばしにした多くの人が子供を持つのをあきらめているもようだ。

フランスは数少ない少子化対策に成功した先進国とみられていた。合計特殊出生率が1993年に1.66まで下がり、保育所を原則無料にするなど育児給付を手厚くする政策をとった。国内総生産(GDP)の3%にあたる手厚い育児支援予算で、06年には出生率が2まで回復していた。

潮目が変わったのは10年の欧州債務危機だ。緊縮財政を迫られ、給付を削減せざるを得なくなった。14年に30代の女性の出生率が20代を上回り、20代の人口1000人あたりの出生数は5年間で1割減った。明治大学の加藤久和教授は「給付減は高所得者向けだったが、手厚い少子化対策が転機を迎えたと受け止められた」と分析する。

緊縮財政はイタリアや英国の出生率の低下にも影響したとみられる。公的支援が縮小されると、貯蓄など一定の備えをしてから出産しようと考える人が増えるからだ。

対照的に育児支援策の拡充によって出生数を増やしてきたのがドイツだ。16年には約20年ぶりの高水準である79万2千人まで増加。「30~37歳の女性の出産が増えている」(連邦統計局)。出生率も1.59と70年代前半の水準に上昇。1990年代半ばの1.2台前半からV字回復した。

積極的な移民受け入れも後押しした。母親が外国人の子どもが前年比25%も増え、出生数の4分の1近い18万5千人を占めた。17年の出生数は7年ぶりに減ったと推計されるが横ばい圏で好調は続く。

リーマン危機後の15~24歳の若年失業率はドイツでは年々低下した。一方、若年失業率が高止まりしたフランスでは出生率が下がった。

「反移民」も逆風

少子化は経済成長率を中長期にわたって下押しする要因になる。欧州委員会は欧州連合(EU)域内の労働力人口(24~64歳)が16年から70年に約1割減ると予測する。

本来、移民の受け入れ拡大は労働力人口の目減りを補う。しかし欧州では反移民の動きが強まっており、こうした道は難しくなっている。

移民リスクはベビーブームに沸くドイツにもあてはまる。同国の極右政党などは「外国人ばかりが子どもを増やし、国民の税負担が高まっている」との批判を強めている。欧州委では、出生数が予測よりも2割少なくなると、中長期的に域内の潜在成長率が0.3ポイント下がると試算する。

米国でも移民の増加は少子化の解決策になりうるが、トランプ米大統領の就任を機に米共和党でも移民受け入れへの慎重論が強まっている。

米国では平均寿命が延びる一方、ベビーブーマー世代が引退の時期を迎えつつある。日本のように引退世代を支える現役世代の負担が年々重くなり、経済の活力を損なう可能性も指摘され始めた。先進国は生産性の向上が共通の課題になりつつある。

(渡部加奈子、石川潤、森本学)



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