八方美人外交、韓国空回り 北朝鮮への対話提案、返答はICBM 核解決、こだわる07年宣言 2017/8/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「八方美人外交、韓国空回り 北朝鮮への対話提案、返答はICBM 核解決、こだわる07年宣言」です。





 北朝鮮は7月28日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の夢も打ち砕いた。再三にわたる南北対話の呼びかけに、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は2度目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射という最悪の返答をもたらした。南北を回転軸とする文外交に狂いが生じ始めている。9年ぶりの革新系大統領が描く「北朝鮮カレンダー」は容易にめくれない。

 10日、北朝鮮による米領グアム周辺へのミサイル発射計画の詳細が明らかになると、韓国軍は「韓国軍と韓米同盟の強力かつ断固たる対応に直面するだろう」と警告、米国と足並みをそろえた。もちろん、南北対決は文政権の本意ではない。

 7日の米韓首脳の電話協議は文氏がしゃべりっぱなしだった。「韓(朝鮮)半島で二度と戦争の惨状が起きるのは容認できない」と米国にクギを刺した。聞き役だったトランプ氏が切りだした。「実際に北朝鮮に対話を提案したのか」。文氏は自らが呼びかけた南北間の軍事当局者会談や赤十字会談は、日米が時期尚早とみる核問題をめぐる北朝鮮との協議と性格が違うと懸命に説明した。

■米中朝仲介望む

 「この約束に北朝鮮核問題の解決策がすべて入っている」。南北融和をめざす文氏が理想とする外交文書がある。2007年10月4日、平壌での南北首脳会談で発表された共同宣言だ。

 「(米中を交えた)首脳会談を開き、朝鮮戦争の終戦を宣言する」「南と北は停戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を構築する」。北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の05年共同声明の「順調な履行」もうたっている。

 05年声明には北朝鮮が核を放棄する見返りに、北朝鮮への経済協力、米国による不可侵宣言、米朝・日朝の国交正常化に向けた措置が含まれる。文氏が7月に独で発表した北朝鮮核問題の包括的解決策「ベルリン構想」と驚くほど似ている。

 浮かびあがるのは、「18年中の南北首脳会談→同会談を踏まえた米韓首脳会談→米朝直接協議→南北プラス米中4カ国または6カ国協議」というシナリオ。文氏は南北首脳会談を足がかりに正恩氏とトランプ氏、中国の習近平国家主席、安倍晋三首相らをつなぐ橋渡しになりたがっている。だからこそこれらの関係国と仲たがいするわけにはいかない。八方美人外交を展開してきた理由だ。

■崩れるバランス

 だが、それが空回りしている。6日夜、マニラ。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の夕食会の控室で、康京和(カン・ギョンファ)外相は直談判に及んだ。北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は戸惑った表情を浮かべつつも「南の提案は誠意に欠ける」とにべもなかった。

 7日付の韓国紙に、北朝鮮の李氏とは笑顔で、韓国の康氏とは仏頂面でそれぞれ会談に臨む中国の王毅外相の写真が並んだ。ICBM発射を受け在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の発射台を4基追加配備するよう指示し、本格運用に踏みきった文氏の決定に、王氏は「両国関係に冷水を浴びせた」と色をなした。THAAD問題で韓国への経済報復はやまない。

 THAADに関し「完全配備も、撤回もしない」という曖昧さを保ちながら米中間で綱渡りを演じる文氏。北朝鮮核問題が進展し、THAADが無用になるまでの時間稼ぎをする狙いがみえるがバランスが崩れだした。

 7月のベルリンでの中韓首脳会談で、習氏は「北朝鮮とは血盟の関係」との表現を使った。韓国大統領府によると「その(血盟)関係が根本的に変わったわけではない」と話した。その後、文氏に同席した康外相が、「過去の話」として紹介されたと軌道修正したが、「血盟」発言に中国の立ち位置がにじむ。米国との関係でも文氏はトランプ氏から米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉や在韓米軍の駐留経費の負担増を突きつけられた。

 国際会議デビューとなった独での20カ国・地域(G20)首脳会議で文氏は国際政治のリアリズムを味わった。「我々が身に染みて感じなければならないのは、最も切迫した朝鮮半島の問題を韓国に解決する力がない、合意を引きだす力もないという現実だ」。文政権の苦悩の日々が続く。

(ソウル支局長 峯岸博)



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