共育社会をつくる(上) 待機児童解消には「箱より人」 待遇改善とシニアが力 2017/6/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「共育社会をつくる(上) 待機児童解消には「箱より人」 待遇改善とシニアが力」です。





 日本で生まれた子供の数が昨年、明治半ば以降で初めて100万人を割った。将来の現役世代の減少は、経済成長を阻み、社会保障制度を危うくする。危機を前に「こども保険」の検討など議論も盛り上がる。次世代を共に育む「共育社会」を私たちはつくれるだろうか。

保育士の資格を持たないシニアも現場で活躍する(東京都江東区の保育園「ベリーベアー深川冬木」)

 希望した保育所は32園。「全落ち」だった。首都圏に住む鈴木麻美さん(40)は今春、0歳児の保育所探しに苦戦した。5月、無認可園が空いたが片道徒歩35分。「2人目は無理かも」

 昨年の合計特殊出生率は1.44。2年ぶりの低下だ。子育て世代の女性の就業率が7割に達し、育児と仕事の両立は、労働力確保に加え少子化対策としても不可欠。なのに必須インフラである保育所が足りない。

 入所できない待機児童は約2万3700人。国も施設を増やし、5年間で53万人分の受け皿づくりを進めてきた。だが保育士がいなければフル稼働できない。

 千葉市は今春、18の民間保育所で保育士37人が不足。園児の枠を約330人減らした。近接する白井市では、公立保育所3カ所で0歳児54人を預かれるはずが30人にとどまる。

 民間の保育所で働く保育士の平均月収は約23万円。他産業より10万円程度低い。「きつくて低賃金」との悪評は、人手不足下での人材獲得を阻害する。国の新対策では3年間で22万人の受け皿をつくる。ただ保育士確保の裏付けはない。

 そんな流れを変えた職場が東京・赤坂にある。4人の枠に約550人が応募――。ソフト開発のワークスアプリケーションズの社内保育所「ウィズキッズ」。保育士希望が殺到した。契約社員だが月給は同社の正社員と同じ30万円から。

 認可保育所の保育士の賃金は、保護者の負担と国や自治体の補助金で賄われるため、原資に限りがある。同社も国が制度化した企業主導型保育所として補助金を受け取るが「これでは足りない」と独自に上乗せした。「優秀な社員の子育て支援に金をかけても全く損はない」(牧野正幸・最高経営責任者)

 次世代を育む人の待遇改善は誰が担うのか。「昭和の教員不足を補った『人材確保法』にならえばいい」。認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は提案する。当時の首相、田中角栄は教員の給与を増やす法を作った。高度成長期だからできた奇策。実現性は薄いがヒントにはなる。

 国は今年度、月6千円、ベテランにはさらに最大月4万円賃金を上げる。駒崎さんは「育児支援は国の課題。効果を検証したうえで、政権の責任で待遇改善を考えるべきだ」と話す。

 お金以外でも後押しできないか。シニアも立ち上がる。日本ワークライフバランスサポート協会(東京)が養成する「グランドシッター」。既に十数人が保育士の補助役で現場に立つ。加藤真さん(63)もその一人。富士通で本部長級ポストを務め、今は企業の人材育成も手伝う。「保育士の助言役も担いたい」

 野村総合研究所の調査で乳幼児の親の7割が「希望の保育サービスが利用可能ならもう1人子供がほしい」と答えた。国民の希望出生率は1.8。現実との差を埋める解は見えている。



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