内向き隣国、描けぬ未来 韓国大統領選 2017/5/10 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「内向き隣国、描けぬ未来 韓国大統領選」です。





 韓国大統領選は文在寅(ムン・ジェイン)氏による9年ぶりの革新系の政権誕生で決着した。朴槿恵(パク・クネ)前大統領を罷免に追い込んだ市民の怒りは奔流となり、特権層との埋められない格差など成長のひずみに光を当てた文氏を押しあげた。北朝鮮の核危機のさなかの論戦で、日本を含む東アジア情勢を見渡すようなビジョンは最後まで聞かれなかった。

 民意の矛先は「積弊」と呼ばれる旧体制下で積み重ねられた政治、経済、社会分野の構造問題に向けられた。時の政権と財閥企業が持ちつ持たれつの密接な関係を築く「政経癒着」の成長モデルが定着し、巨大な富を稼ぐ財閥は創業家の世襲を繰り返す。一握りの勝ち組に入るため権力者の汚職やコネ、接待文化がはびこり、こぼれ落ちた若者が不遇を嘆く。

 こんな社会をただそうと「積弊の清算」「政権交代」を掲げた文氏のスローガンは市民の胸に響き、米朝対立の緊張さえ脇役に追いやった。

 文氏は雇用改善が急務だとし、81万人の雇用創出をはじめ、中小企業に就職した若者への賃金支援や勤労時間の短縮などバラ色の公約を並べた。実際は「民間企業に負担の重い政策が多く、実現には時間がかかる」と経済団体幹部は身構える。

 内向く民衆に迎合するリーダーの構図は、欧米など世界各地で起きている現象だ。新大統領に猶予は許されない。足元では、北朝鮮の核問題をめぐり米朝が中国を挟んで激しくせめぎ合う。世界秩序に組みこまれているのに、大統領選候補たちの関心はもっぱら国内問題やスキャンダル、理念闘争などに向けられ、東アジアの安全保障の視点が抜け落ちていた。

 新大統領はすぐさま国際社会のパワーゲームにさらされる。待ち受けるのはポピュリズム(大衆迎合)だけでは立ちゆかない厳しい現実だ。新大統領の政策が好意的に見守られるハネムーン(蜜月)の期間は思いの外、短いかもしれない。

 韓国の内向き志向は、日本にとって人ごとではない。トランプ米大統領、習近平・中国国家主席、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮委員長……。周辺には手ごわい相手がそろう。「外交が立ちゆかなくなれば日本への強硬姿勢で国内の批判をかわす戦術に出るのではないか」。こんな不穏な観測も流れ始めている。

 (ソウル支局長 峯岸博)



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