円の真の「実力」を知る 実質実効レート 長期上昇を示唆 2016/04/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマネー&インベストメント面にある「円の真の「実力」を知る 実質実効レート 長期上昇を示唆」です。





 ここ数年、円安傾向が続く中で外国為替市場では円高への相場反転を予想する専門家が増えていた。その根拠の一つとなってきたのが「実質実効為替レート」と呼ばれる指数だ。円相場は足元で急伸し、市場の「円高説」を裏付けた格好だ。長期的に為替相場を占ううえで参考になるとされる実質実効レートとはどんな指数なのだろうか。

 円相場はドルに対する値動きばかりに注目しがちだが、実際には様々な通貨に対して日々変動している。円が対ドルで上昇していても、同時に対ユーロで下落していれば、必ずしも円高だといえない。

 円の総合的な価値変化を探るために日銀はいくつかの指数を公表している。1つが、ドルやユーロ、英ポンド、人民元などの主要通貨に対する値動きを、各国・地域との貿易量などを基に加重平均して求める名目実効レートだ。

 さらに物価変動の影響まで考慮して調整したのが、市場関係者がとりわけ注目する実質実効レート。為替相場は長期的には通貨間の物価変動の差を反映するはず、という購買力平価の考え方に基づく。

 例えば米国の物価上昇率が日本より高いときはドルで買える商品の量は相対的に少なくなり、対円でみた価値は下がる(円の対ドル価値は上がる)。物価上昇率の差が2割ならドルは2割下落するはずだと考える。

 一方、同じ時期に現実の外為市場でドルが3割下落していたとしよう。物価格差2割を超えて円高・ドル安が進んでいる。つまり、1割分は購買力平価では説明できない円高圧力。理論的には円高は行き過ぎており、やがて相場は反転すると考えられる。

 グラフAは1973年以降を対象に算出した円の実質実効レート(円の対ドル相場も併記)。上下に変動しながらも、「一方向に放置されることはなく、数年単位で平均的な水準に戻る傾向がある」(龍谷大学の竹中正治教授)。

 物価の影響も考慮した円の総合的な価値で考えると、行き過ぎた円高も円安もこれまで、おおむね解消されてきた。ここで注目すべきは、ここ数年に限って見ると、同指数が平均値を大幅に下回ってきたこと。理論上はかなり過剰な円安が続いてきたのだ。

 特に昨夏のかい離は約3割と過去最大レベル。日本の緩和継続と米国の早期利上げへの観測が円売り・ドル買いを招いた。日銀の黒田東彦総裁が昨年6月、実質実効レートについて「ここからさらに円安(方向)に振れることはありそうもない」と述べたのもかい離が大きかったからだ。

 かい離幅は足元で縮まったが、それでもまだ円安方向の水準。市場関係者の多くが円高余地が残ると予想する根拠の1つだ。この考え方は外貨投資にも応用できる(図B)。

 例えば73年以降、指数が平均値より15%以上高い水準(円高方向)にあった月にドル買いをしたとする。結果的にその後、相場は円安・ドル高に反転し、3年後には平均11%の為替差益を得られた。

 もちろん実質実効レートも絶対的ではない。久留米大学の塚崎公義教授は「日本企業の海外生産の進展など、物価以外で円安につながる環境変化が織り込まれていない」と指摘する。長期的に為替を考える判断材料の一つと考えたい。

(編集委員 田村正之)



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