制裁にゆがむ市場経済 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「制裁にゆがむ市場経済」です。





グローバル化が進み、各国の相互依存が増した世界では、貿易制裁は自らの経済も傷つけることになる。その懸念は、すでに素材の取引で顕在化している。

米国が鉄鋼とともに通商拡大法232条に基づく追加関税を3月に導入したアルミ。国際指標であるロンドン金属取引所(LME)相場に企業がどれだけ上乗せして現物を取引するかという「割増金(プレミアム)」は、米国だけが突出して拡大した。

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住友商事グローバルリサーチの調べでは、昨年10月時点で1トン200ドル程度だった米中西部地区の割増金は4月に500ドル近辺まで跳ね上がった。

日本アルミニウム協会のまとめで、2016年に米国が消費したアルミ新地金は512万トン。3千万トンを超す中国には遠く及ばないが、飲料缶や自動車部品、建材などの需要は旺盛で、世界第2の規模を持つ。

一方、米国のアルミ生産能力は80万トン強にすぎない。米国も1980年前後には400万トン超の精錬能力があった。だが、世界のアルミ生産は能力増強に走った中国や、オーストラリアなどの原料資源国、電力料金の安いアラブ首長国連邦(UAE)などの中東諸国にシフトし、米国の精錬設備は淘汰された。

こうした世界の構造変化が、関税を引き上げることで元に戻ることはない。逆に、自動車部品などを製造する米国の企業は、突出して高い原料調達コストを強いられる。

高炉大手によれば、日本の鉄鋼製品の対米輸出は追加関税導入後も大きな影響を受けていない。「自動車部品に使う特殊な線材や石油の掘削パイプなど米国製品で代替できないものが多い」(JFEスチールの柿木厚司社長)からだ。

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米商務省は6月、日本を含む鉄鋼製品の一部を追加関税の対象から外すことを決めた。コスト増に直面した米企業が政府に適用除外を申請したからだ。

米国の企業が日本製品を使うのは、そこに他にない付加価値があることが理由だ。これも関税引き上げで米企業に需要が戻るわけではない。

みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「日本の自動車メーカーは(70年代から始まった)自動車摩擦を現地生産の拡大という対応で乗り切った。ただ、グローバル化が進んだ現在、対外圧力をかけてもこうした効果は期待できない」とみる。

貿易制限の連鎖は、市場での自由な価格形成をゆがめ、互いの経済を傷つけ、萎縮させるだけだ。

みずほ総合研究所の試算では、通商問題の報復がエスカレートし、米中間の貿易が20%減少した場合、中国の国内総生産(GDP)は3%強押し下げられる。

ただし、世界第2の経済国に成長した中国の失速は、米国にも1%弱のGDP減少として跳ね返る。貿易の減少を自国生産の増加で補えないからだ。その試算が現実に近いことは素材の取引市場で実感できる。



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