前例にとらわれぬ教育を 基調講演 ユーグレナ社長 出雲充氏 2016/02/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の特集面にある「前例にとらわれぬ教育を 基調講演 ユーグレナ社長 出雲充氏」です。





 東京大学発のベンチャー企業として初めて東証1部に上場したユーグレナは、藻の一種のミドリムシを原料にした航空機燃料の実用化などに取り組む。出雲充社長が起業に至った海外での経験や大学の役割について語った。

 私は東京都多摩市にあるニュータウンの平凡な家庭で育った。父はサラリーマンで母は専業主婦、兄弟は弟が1人の4人家族。平凡な家庭で何一つ特別なことはない。そんな私が大学3年の時に「ミドリムシで地球を救う」という人生を変える決断をした。

 きっかけは1998年、大学1年の夏休みに訪れたバングラデシュだ。同国の人口は約1億5500万人で日本より多いが、国土は北海道の2倍程度と狭い。そのうえ、ほとんどの人の1日の所得が1ドル程度という貧しい国だ。

 行く前はひもじい子供が大勢いると思っていたが、食べ物はあり、ただ栄養失調が問題だった。カレーに肉や野菜など具が入っていない。そこで、栄養について勉強したいと思い日本に戻ってから調べた。私は文科系で大学に入ったが、栄養学を学ぶため、その後農学部に転部した。

 理想的な食べ物を探すなか、大学3年の時に出合ったのがミドリムシだ。ミドリムシは人間が生きるうえで必要な動物性と植物性の栄養素を一度に作ることができる。

 これで栄養失調をなくせると思ったが、当時はミドリムシの大量培養が難しかった。私たちは大量培養に挑み、2005年に世界で初めて屋外の巨大な培養槽でたくさんのミドリムシを安く育てる技術を発明した。

 もう一つ、ミドリムシでやりたいことができた。化石燃料に頼る社会から持続可能な社会への移行に活用することだ。トウモロコシなどを原料とするバイオ燃料は、普段食べている人にとっては価格上昇を招き迷惑となる。ミドリムシは海や砂漠でもプールさえあれば生産できる。

 しかし、05年に3人で会社を設立した当時は苦労した。事業計画書を作って会社を回ったが、販売実績がないと断られ続けた。501社目となる伊藤忠商事からアプローチがあり全てが変わった。

 大切にしないといけないのは1番にこだわるということだ。私は資金や特別な教え、人脈がなくても、ミドリムシで1番の会社をつくることができた。適切な科学技術と試行回数のかけ算で誰でも同様の奇跡を起こすことができる。たとえ最初の1回の成功率が1%であっても、確率では459回挑戦すれば99%超になる。

 私はバングラデシュで栄養失調に出合い、それを機に大学での専門も変えた。これから大学を選ぶ際にはどんな分野でも、例え周囲の人に「変だ」と思われても好きなものを絶対捨てないでほしい。同時に先輩方には前例にとらわれず、学生や大学の新技術を立派に育てられるかという前向きな視点で経験・見識のご活用をお願いしたい。

 いずも・みつる 98年(平成10年)東大文科3類入学、3年進級時に農学部に転部。02年東大農学部農業構造経営学専修課程卒、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入社。05年8月、ユーグレナ設立。36歳。



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