動き出す所得税改革(上)世代間格差 争点に 制度設計は難航も 2015/08/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「動き出す所得税改革(上)世代間格差 争点に 制度設計は難航も」です。





 政府が所得税の改革に向けて議論を始めた。子育てに取り組む現役世代の負担増を抑え、多様な働き方を育む税制をつくる狙いだ。ただ、庶民の財布に直結する話だけに改革のハードルは高い。鳴り物入りの所得税改革の深層を探ってみた。

「ダブルで控除」

 「所得の多い高齢者がダブルで控除を受けることに疑問を持つ」。7月31日の政府税制調査会総会。委員の土居丈朗慶大教授がこう発言すると議場に緊張が走った。

 「ダブル控除」とは、年金をもらいながら仕事を続ける高齢者が実質的な減税措置を二重に受けている現状を指す。

 年金受給者は年金の一部を課税対象から外し税負担を軽くできる「公的年金等控除」を使える。給与所得があればみなし経費を差し引く「給与所得控除」も適用される。月収25万円の同じ仕事をしても70歳の高齢者は30歳の若者より年20万円以上手取り額が多いケースもあるという。

 1990年に12.0%だった総人口に占める65歳以上の高齢者の比率は今年26.8%に高まる。一方、15~64歳の生産年齢人口は大幅に減少。高齢者1人に対し5~6人いた15~64歳の現役世代が2~3人に減っている。現役世代に負担が偏る税制では経済成長の基盤がゆらぎ少子化も止まらない。年16兆円の所得税収も目減りする。

 政府が6月に決めた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でも所得税改革の狙いについて「将来の成長の担い手である若い世代に光を当てる」と指摘した。改革の起点は高齢者を一律に弱者とみなす現行制度の前提を見直すことにある。

 だが、政府内では正面切って世代間の負担格差是正を打ち出すことにためらいがある。「高齢者だから負担を求めるのではない。豊かな方には負担をお願いし困っている方のために使う方向だ」。政府税調会長の中里実東大教授はこう語る。

 世代間格差の議論が停滞した背景には制度設計の難しさがある。単純に年金等控除を縮小すれば所得の少ない高齢者にも負担増が及ぶ。給与所得を受け取る高齢者の控除額を減らせば働く意欲をそぐ。人口減への備えとしてシニアの活用を探る時代の要請に合わない。

早くても17年度

 「年齢を問わず個人の負担力を測るには、所得に加え金融資産もみる必要がある」(財務省幹部)。75歳以上の平均純資産は2000万円を超える。だが所得と資産の両面から負担力をはかる仕組み作りは道半ば。税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の預金口座へのひも付け義務化は2021年以降の課題だ。

 政府は所得税改革で国民負担を増やさない「税収中立」をめざす。総額で見れば税収中立でもそれぞれの納税者ベースでは損得が発生するのは避けられない。政府内では「来年夏の参院選を前に負担増を含む所得税改革を打ち出すことは難しい」(政府関係者)との見方が強まっている。

 政府税調は今秋に所得税改革の中間論点整理をまとめ、来年中に答申を出す見通しだ。大規模な改正は早くても17年度税制改正からで実際の制度変更は18年1月からになるとの見方が浮上する。



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