動き出す所得税改革(下)消費増税とどう整合 社会保障連動も不可欠 2015/08/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「動き出す所得税改革(下)消費増税とどう整合 社会保障連動も不可欠」です。





 「税体系全般にわたるオーバーホール(総点検)を進める」。政府が6月末に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にはこんな文言がある。時代にあわない税のゆがみをゼロから見直すという意味だが、政府・与党の所得税改革論議でこぼれ落ちそうな論点が2つある。

位置づけ見えず

 1つは税制全体のなかでの所得税の位置づけだ。

 2015年度予算の税収内訳を見ると、消費税収は17.1兆円で所得税収(16.4兆円)を上回る。「消費税を中核とする」。財務省が4月に首相官邸に提出した「税制改革の検討の視点と方向性」と題したメモにもこんな一文が入っている。

 ところが、その消費税の中期的な展望が見えない。「10%まで消費税率を上げるが、それ以上の引き上げで税収を増やすことは考えていない」。安倍晋三首相は3月に国会でこう答弁した。国の借金は1000兆円を超す。財政健全化に向け消費税にどこまで頼るかの展望が見えないなかで所得税の改革議論だけが進む展開だ。

 課税の不公平が生じやすい所得税は「20世紀の税」とも呼ばれる。消費税などの間接税へのシフトは世界的な潮流だ。KPMGインターナショナルによると、税制改革で先行する欧州では間接税の税率が14年に平均20.18%まで上がった。消費税率を欧州並みの20%まで上げていくかで、所得税の在り方も大きく変わってくる。

 財務省幹部に10%超の消費税率についてどう扱うか聞くと「今、そんな話をすべきじゃない」との答えだった。政治的な問題に発展しやすい消費増税は先行きの議論はしにくいためだ。

残る130万円の壁

 置き去りになりそうな議論はもう1つある。社会保障制度との関係だ。 健康保険や年金給付のために国民が支払う社会保険料は年60兆円を超え国の税収(54.5兆円)を上回る。納める人の感覚では所得税とあまり変わらないが、所得税改革と連動した社会保障改革の議論は進まない。

 今回の所得税改革では、年収103万円以下の専業主婦世帯などの税負担を軽くする配偶者控除の見直しが浮上する。同控除の適用を受けられるように働く時間をわざわざ減らすゆがみが広がっているためだ。

 同じ問題は社会保障でもある。年収が130万円以上になると社会保険料の負担増が生じる「130万円の壁」だ。近藤絢子横浜国立大学准教授は「130万円の壁が無くならない限り、税制をいくら変えても就労調整はなくならないのではないか」と言う。

 徴税や社会保険料の徴収の効率化もあいまいだ。米国は内国歳入庁が税と社会保険料を一体で徴収するなどの統合が進んでいる。一方、日本では国税庁と日本年金機構(旧社会保険庁)の縦割りが残ったままだ。

 税制の総点検。意気込みを感じさせる骨太方針のことばをどこまで実現できるだろうか。視界はまだ開けていない。



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