北朝鮮、対中蜜月で強気? 2018/05/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「北朝鮮、対中蜜月で強気?」です。





6月の米朝首脳会談に向けた米朝の駆け引きが続くなか、北朝鮮が強硬策に出た。米韓の軍事演習に反発し、16日に予定していた南北閣僚級会談の延期を表明。米朝首脳会談の再考もちらつかせながら、北朝鮮への強硬姿勢で知られるトランプ政権高官を名指しで非難した。緊張をあおり「完全な非核化」で米国に譲歩を迫る瀬戸際戦術の一環だ。強気の背後には、中国との急接近で得た「自信」も垣間見える。

軍事訓練けん制

16日午前0時半、北朝鮮当局は韓国統一省に一方的な会談延期を通知した。11日から米韓空軍が展開中の航空戦闘訓練を理由に挙げ「我々が示した努力に非道な挑発で応え、全同胞と国際社会に憂慮と失望を与えた」と不快感を表明した。そもそも16日の閣僚級会談開催は、前日の15日に北朝鮮側から日付を指定してきたにもかかわらずだ。

北朝鮮の真意は、その通知の半日後に発表した金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官の談話にあったようだ。談話はボルトン米大統領補佐官を名指しし「対話の相手を甚だしく刺激する妄言が次々と飛び出ている不穏な行為に失望する」と非難を加えた。

ボルトン氏は13日の米ABCテレビで「北朝鮮に見返りを与えるより前に、恒久的かつ検証可能で不可逆的な非核化が必要だ」と主張していた。就任前には北朝鮮への先制攻撃論や、非核化を果たしたリビアの成功体験を参考にする考えなどを唱えてきた強硬派だ。

北朝鮮の談話は6月12日にシンガポールで開く米朝首脳会談にも言及。「一方的な核放棄だけを強要するなら、対話にこれ以上興味を持たない。会談に応じるか再考するしかない」と米国を威嚇した。突然のかたくなな態度は、米国への接近や非核化に対する軍などの不満を意識したとの見方もあるが、北朝鮮専門家は積極的な金正恩(キム・ジョンウン)委員長の意思があるとみる。

北朝鮮が念願だった米国との対話をやすやすと手放す選択肢はない。交渉の主導権を米側に握られないようけん制し、首脳会談で自らに有利な合意を導こうと動いたと見るのが自然だ。軍事演習への反発と談話からは朝鮮半島での米軍プレゼンスを低下させようとする意図が透ける。

談話は「米国の敵視政策と核の威嚇・恐喝を終わらせることが先決条件」とも主張した。米朝首脳会談では休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言も焦点だが、北朝鮮が望む「体制保証」の核心は、米軍を朝鮮半島から遠ざける方策にある。2016年に北朝鮮が発表した声明は、韓国に核兵器を持ち込まない確約や戦略兵器の展開中止、在韓米軍の撤収まで求めた。

着地点見通せず

北朝鮮が示した強気の姿勢の背景には、外交的な自信がうかがえる。年明け以降、韓国とは融和を進めてきた。韓国大統領府高官は16日、一連の北朝鮮の対応を「米朝がよい結果を生むための陣痛だ」と評した。北朝鮮の希望に沿って、米韓軍事演習への戦略爆撃機の投入も見送った。

何より中国という「後ろ盾」を得た強みは大きい。中国外務省の陸慷報道局長は16日の記者会見で「全ての関係国は互いに緊張を引き起こす行為を避けるべきだ」と述べ、北朝鮮を擁護した。2度の首脳会談を経て急速に接近する中朝は「段階的非核化」で共鳴する。

北朝鮮にとって最大のリスクは、軍事攻撃の可能性もちらつかせるトランプ米大統領の存在だった。ただ、ポンペオ国務長官が就任前も含めて2度訪朝、9日には金正恩氏と「米国が与えられる体制保証」について話し、北朝鮮側も「満足な合意」を表明した。来週には北東部の豊渓里(プンゲリ)核実験場を爆破し「完全封鎖」するとも宣言、約束履行へ北朝鮮なりの「誠意」も見せた。

自信を得て、リスクを排除したと考えた北朝鮮が4週間後に迫った首脳会談へのディールに動き始めたとも読める。予測不可能性の高いトランプ、金正恩両氏の取引の着地点はまだ見通せない。

(ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅)



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