北朝鮮「中国全域射程に」 ミサイルで幹部が極秘話 北京上 空映像を公開 2017/8/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「北朝鮮「中国全域射程に」 ミサイルで幹部が極秘話 北京上空映像を公開」です。





 「弾道ミサイルは中国全域を射程に収めた」。北朝鮮幹部が内部で口にした極秘話が国境をまたぎ中国側に流れている。グアムを狙うミサイル発射の有無に世界が注目するが、実は「全中国が北朝鮮の核ミサイルの照準内」との事実も今の緊張を読み解くには重要だ。

5月21日に発射した弾道ミサイルに搭載したカメラの映像(北朝鮮の朝鮮中央テレビより)

 北朝鮮の意図がにじむ映像が公表された。5月21日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長も立ち会う中、内陸部から中距離弾道ミサイル「北極星2」を発射した。ミサイル搭載のカメラは地上から遠ざかる様子を撮影。翌日、国営放送が公開した。

 軍事専門家の分析では、中国領内の地形を延々と映している。ミサイルは東の日本海に落ちたのに映像は西側だ。

 「中国の遼東半島が見える。西は渤海。南は黄海だ。渤海の西には北京が見えるはずだが、分厚い雲が邪魔した。映像は最後のアングルを北京上空に移し照準を定めた」

 中国領の映像公開に関しては「北京も標的にできると映像で意図を伝えた。金正恩は習近平(国家主席)を脅している」。米本土を狙うのは至難だが、北京は容易だ。

 とはいえ北朝鮮は経済的には中国頼みが明らか。石油だけではない。市場にあふれる中国製品なしに生活は成り立たない。「金正恩は中国の“半植民地”になるのを避ける手段が核兵器だと考えている。ミサイルと合わせれば経済的にかなわぬ中国と対等に話せる」。別の中朝関係者の見方だ。

 米国との国交樹立も中国依存を脱する手段だ。それは中国自身が歩んだ道でもある。1964年、中国は原爆実験に成功。67年に水爆実験、70年には弾道ミサイルで人工衛星を打ち上げた。結果は72年のニクソン訪中による国交正常化だった。

 中朝関係がこじれた要因は中国の内政にもある。中国とのパイプ役だった正恩氏の叔父、張成沢氏は2012年8月17日、北京で当時の中国トップ、胡錦濤氏と会談。複数の関係筋によると、そこで張氏から重大な提案があった。

 正恩を排し、兄の正男を中国の後ろ盾で擁立したい――。胡氏は決断できず「最高指導部会議に諮る」と伝えた。これが張氏と正男氏の運命を決めた。

 最高指導部メンバーの周永康氏は金正日時代から正恩氏と気脈を通じていた。張氏の動きを盗聴で察知し、ひそかに正恩氏側に通報した。内政の闘いに利用する思惑もあった。連絡役は後に習近平政権が摘発した国家安全省幹部の馬建氏だという。激怒した正恩氏は13年末、張氏を死刑に。今年2月、マレーシアで正男氏が殺されたのも延長線上にある。

 一方、権力闘争に敗れた周氏も汚職が理由で無期懲役に。だが罪状には国家機密漏洩も含まれる。盗聴で得た情報を正恩氏側に漏らした罪だ。

 中国のいら立ちがにじむ論評が今月11日の環球時報に載った。ポイントは2つある。(1)北朝鮮が米領を威嚇するミサイルを撃ち報復を招けば中国は中立を保つ(2)米韓同盟が軍事攻撃で朝鮮半島の支配の現状を変えるなら中国は断固阻止する。

 (1)は中朝友好協力相互援助条約にある「自動参戦条項」の不履行宣言だ。北朝鮮が攻撃されても軍事援助しない。一方、(2)では武力行使を排除しない。朝鮮戦争では米韓軍が中朝国境に迫ると、中国の人民志願軍が鴨緑江を越えた。今回も米軍が北朝鮮に踏み込めば中国軍も進入するだろう。

 北朝鮮の反撃で深刻な代価を払うだけに米国は簡単に攻撃に踏み切れない。米中朝のチキンレースは続く。

(編集委員 中沢克二)



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