北朝鮮に投資する日 2018/06/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「北朝鮮に投資する日」です。





6月13日夜、シンガポール。市内の会員制社交クラブに金融業などにたずさわる専門家が集った。前日の米朝首脳会談について意見を交換するためだ。見渡す限り、参加者は100人を軽く超えていた。

著名人がパネリストを務める正式な討論会が始まるまで、集まった人びとはグラスを傾け自由な議論を楽しんだ。印象に残ったのはこんな声だ。

「会談の成果は金正恩(キム・ジョンウン)委員長がシンガポールを体験したこと。米国とうまくつきあえば、かくも豊かな社会を築けるかもしれないと思っただろうからね」

目先のアジアの軍事的な緊張はやわらぎ、ゆっくりとではあるが北朝鮮が開かれた国になるかもしれないという見立てだ。

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焦点だった「非核化」の手続きの曖昧さを理由に、首脳会談を失敗と冷ややかに片づける向きは多い。しかし、シンガポールの市場関係者に限れば、歴史の歯車が回り始める瞬間を見逃すまいという、期待と緊張感に満ちていた。

在シンガポールの著名投資家、ジム・ロジャーズ氏は首脳会談を受けてテレビ出演し「(北朝鮮への投資が)自由にできるようになれば、活動を進める」と語った。現状では代替策として「大韓航空株に投資している」という。南北和平が進み人の行き来が活発になれば、大きな恩恵を受けるとの読みだ。

大局から潮流の変化を予想し、リスクをとって素早く動く。プロの投資家とはそういう振る舞いをする人たちのことだ。

ロジャーズ氏だけではない。シンガポールとエチオピアに拠点を持つ投資ファンド、SGIフロンティア・キャピタルを率いるガブリエル・シュルツ氏は、トランプ大統領の娘婿であるクシュナー氏に、米朝首脳会談の実現を働きかけたひとりだという。

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SGIは新興国よりリターンもリスクも高いとされる「フロンティア市場」への投資で知られる。自ら動いたのは、フロンティアとしての北朝鮮に投資機会を見いだしたからだ。

南北朝鮮の統一となれば、インフラ需要は10年間で2兆~3兆ドル――。みずほ総合研究所の調査本部副本部長、長谷川克之氏は週刊リポートの巻頭言で、米韓研究者の調べを総合してこんな数字を紹介している。歴史が動く時に投資家が知りたいのは目先の微細な手続きではなく、近未来の大胆な予想だ。

米政治専門サイトのポリティコによれば、米朝首脳会談を「成功」とする世論は「とても」と「ある程度」の合計で、全体の54%にのぼる。これだけ見れば首脳会談はトランプ大統領にとって悪くないディール(取引)だ。気をよくした大統領が、貿易など他の分野の交渉でいっそう強気に出る可能性がある。

北朝鮮の核問題は貿易と絡み合い、世界の株式相場を不安定にする。そんななかで、マネーは投資機会を貪欲に探している。



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