南シナ海 苦境の習氏 仲裁裁判で完敗→「微笑外交」に微修正 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「南シナ海 苦境の習氏 仲裁裁判で完敗→「微笑外交」に微修正」です。





 南シナ海での中国の主権を認めない判決を仲裁裁判所が下した。苦境に陥った中国の習近平国家主席は受け入れを拒む一方、新たな動きも見せる。それは米国や日本との関係にも微妙な変化をもたらした。

習氏は参院選で基盤を固めた安倍政権を無視できなくなった

 12日の判決から1週間余り、米海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長は山東省青海の中国北海艦隊司令部にいた。「米海軍は南シナ海を含む世界中で法に基づく軍事行動を続ける」。伝えた言葉は判決を無視し、岩礁施設の建設続行まで宣言した中国への警告だった。

G20へ「一時休戦」

 それでも中国は青海でリチャードソン氏に唯一の空母「遼寧」を参観させた。注目すべきは、飛行甲板以外に、艦載機格納庫なども公開した事実だ。海軍大将だけに一目で装備水準を判別できる。中国がリスクを冒したのは「米国との衝突だけは避けたい」という本音を伝えるためだった。

 習主席は25日、訪中したライス米大統領補佐官と北京で会談した。ケリー米国務長官は翌日、ラオスでの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に出席する。習主席がライス氏に「現行の国際秩序と規則に挑戦するつもりはない」と語ったのは、米国への秋波だった。

 そこには、9月に中国・杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議の成功に向けて「一時休戦」の雰囲気を醸し出す狙いもあった。

 判決が出た12日、中国は対日外交でも動いた。モンゴルでのアジア欧州会議(ASEM)の際、中国の李克強首相が安倍晋三首相と会談する日程調整に早々と応じた。現地の事前折衝でも「条件をのまなければ会談自体やめる」という常とう句は封印した。

 8カ月ぶりの日中首相会談は15日、あっさり実現した。南シナ海問題ではぶつかったが、双方とも内容公表は控えた。直前、李首相はモンゴルで南シナ海問題のカギを握るカンボジアの首相らとも会談。ラオスでのASEAN会合を前にねじを巻いていた。中国は翌週、杉山晋輔外務次官の北京入りも受け入れた。

 「経済を含む対日交流は大切だが、中国に厳しい安倍は相手にしたくない」。中国がそんな姿勢を微修正したのはなぜか。「完敗」判決を受け、中国の選択肢は狭まった。国際的な孤立は避けたい。体面さえ保てるなら周辺国との対話に応じる「微笑外交」である。

 参院選での自公勝利も影響した。安倍政権の基盤は盤石になり、中国が気にする憲法改正さえありうる。習指導部も安倍政権を無視できない。「中国は口でどう言おうと相手の力に応じて対処する。中国自身が力の信奉者だからだ」。中国外交を知るアジアの外交官の弁だ。25日、ラオスでは日中外相会談が実現した。

 中国の王毅外相は4月末、北京で岸田文雄外相と会談した際、突出した「日本たたき」に出た。今回も南シナ海問題では原則論に終始したが、年内に日本で予定する日中韓首脳会談の調整には初めて前向きな姿勢を示した。日中の「海空連絡メカニズム」の運用開始も実現させたいとした。

主権問題譲歩せず

 日中韓外相会談が実現すれば王氏の外相就任後の初訪日になる。杭州G20で約1年半ぶりの安倍・習会談があるのかも焦点だ。とはいえ、中国は一連の国際会議の声明で判決に触れるのを力ずくで阻止した。南シナ海での演習も強行している。主権問題では一切、譲歩していない。

 「既存の国際秩序を変えるのは本当に難しい」

 外国訪問中だった習主席が周囲にぽろっと本音を漏らしたことがある。自ら提起した「新しい形の大国関係」が米オバマ政権に事実上、拒まれた後だった。今回、ライス氏に語った「現行の国際秩序と規則に挑戦するつもりはない」との融和姿勢は、既に国際法を無視した以上、方便にすぎない。

 習主席が掲げる「中華民族復興の夢」には米主導の現体制への反発がにじむ。今後も海洋での摩擦は続く。日本は各国と連携し、国際法による解決を根気強く促すしかない。

<仲裁裁判所判決の骨子>・中国が南シナ海に設定した独自の境界線「九段線」には主権、管轄権、歴史的権利を主張する法的根拠はない・南沙諸島には排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の「島」はなく、中国はEEZを主張できない・中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反である・ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある・中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反している



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