原油安、揺れる世界(中)勢力バランス、米優位に 2015/10/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「原油安、揺れる世界(中)勢力バランス、米優位に」です。





 9月3日、北京。抗日戦勝70年式典の会場で、「反米」で鳴らす2人の首脳が向き合っていた。

苦境続くロシア

 ロシアのプーチン大統領とベネズエラのマドゥロ大統領。議題となったのは原油安だ。「原油を政治やイデオロギーの闘争に使うべきではない」。マドゥロ氏は米国をそう批判した。

 原油や天然ガスが輸出の6割を占めるロシア。外貨収入のほぼ全額を原油に頼る南米最大の産油国ベネズエラ。原油安で経済が大打撃を受ける両国にとって、米シェールオイルの増産は「米国の陰謀」と映る。

 そう思わずにいられないほど両国の状況は厳しい。ベネズエラの首都カラカスの歯科医エイレン・ガルシアさん(25)は半年前コロンビアの米国大使館に亡命を求めた。食料品を買うため早朝3時から店の前に並んだ。1日1食の日もあった。子供を抱えて生活できないと母国を去った。

 ロシア議会も9月、慣例の3カ年の予算案をつくれず、2016年の1年分とすることを決めた。4~6月の経済成長率は4.6%のマイナス。通貨も急落し経済の見通しが立たないためだ。

 「世界経済の血液」とも呼ばれる原油は、国家間の力関係を変える触媒にもなる。目先その最大の勝者は米国だろう。

 キューバの首都ハバナ。タクシー運転手、ロベルト・カスティジョさん(43)は「ガソリンの値上げが心配だ」と気をもんでいた。

 同国は反米で結ばれたベネズエラから毎年32億ドル(約4千億円)相当の原油や経済支援を得ていたが、ベネズエラ経済の混乱で途絶えがちになった。キューバが7月、宿敵の米国と歴史的な国交回復に動いた一因だ。

 米国の優位は、サウジアラビアとの関係でもあらわになった。

 「イラン核合意を実行する重要性について議論したい」。9月4日、オバマ米大統領はホワイトハウスでサウジのサルマン国王に迫った。イランと敵対するサウジは米欧など6カ国がイランと進めた核協議に強く反対してきたが、米とイランが結んだ核合意への支持を表明するしかなかった。

 シェール革命を受け、米国が14年に中東から輸入した原油は4億3千万バレルと10年前の3分の2に減った。米国はかつてほどサウジの機嫌をとる必要がなくなった。

中国は強気貫く

 中国とロシアの力関係も微妙に変わってきた。

 プーチン大統領が習近平国家主席を前に、西シベリアと中国をつなぐ天然ガスパイプライン構想をぶち上げたのが昨年の5月。経済成長へエネルギーを必要とする中国と資源国ロシアの接近は話題をさらった。

 それから1年余り。9月、習近平主席との会談を前にプーチン大統領は計画合意をめざし高官らを北京に送り込んだが、空振りした。「まだ高すぎますね」。原油安で買い手として優位に立った中国は強気だった。

 中東の安定も遠のく。8月中旬、モスクワ。サウジのジュベイル外相はロシアのラブロフ外相にシリアのアサド政権への武器供与をやめるよう求めたが拒否された。

 「米国がアサド政権の命運を決めるのは問題だ」。プーチン大統領は米国にもかみつきシリア空爆に踏み切った。価格競争を繰り広げるシェール大国の米国とサウジ。「両国は結託している」との疑念がロシアを突き動かしたともされる。

 国々の勢力バランスを左右する原油価格。その急変動が世界の秩序をきしませている。



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