原油安 揺れる世界(下)安定調達へ日本に福音 2015/10/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「原油安 揺れる世界(下)安定調達へ日本に福音」です。





 「シェールガスの権益を買いませんか」。今夏、米国のシェールブームの火付け役ともいえるチェサピーク・エナジーのダグ・ローラー最高経営責任者(CEO)の姿が東京にあった。エネルギー関連企業などへ売り込みをかけるためだ。

 シンガポールではプーチン大統領の側近で、ロシア国営石油最大手ロスネフチのセチン社長が弱気な発言で日本の業界関係者を驚かせた。「前払いならガスや原油の価格を割り引いてもいい」

 原油安を受け売り手が握っていた交渉の主導権が買い手へと移りつつある。だぶついた原油の売り先を求め、今や中南米やアフリカからも日本詣でが相次ぐ。これを好機とみた石油元売り最大手のJXホールディングスは7月、メキシコの石油会社と半年という異例の長さの購入契約を結び、割安な価格を固定した。直近、日本が中南米から輸入する原油の量は前年の2倍に膨らんだ。

権益確保へ走る

 資源小国の日本にとって原油安は福音だ。特に東日本大震災以降は化石燃料に発電の大半を頼るようになり、燃料コストの急増は貿易赤字の形で日本の富を流出させた。

 有利な価格でエネルギーを確保できれば、電気料金の引き下げなどで企業や家計に恩恵が及ぶ。「日本への富の逆流を促すことができる」(住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長)

 政府は長期にわたり安定してエネルギーを確保する体制づくりを急ぐ。

 「エネルギー分野でできることがあれば、お手伝いしたい」。8月9日、イランの首都テヘラン。山際大志郎経済産業副大臣はザンギャネ石油相に語りかけた。核開発をめぐる主要国の経済制裁が、年内にも解かれるのをにらんだ動きだ。

 過去には投資計画が頓挫した苦い思い出もあるが、イランは世界有数の原油埋蔵量をもつ。原油の優先的な調達に道筋をつけたいとの思いは強い。

 「日本にとっては資源安の今がチャンス」と経産省の幹部は意気込む。資源獲得の予算を2016年度は約900億円と前期より4割増やし、民間の開発を後押しする方針だ。企業側も「良い案件は積極的に取りに行く」(三菱商事の幹部)と足並みをそろえる。

 ただ時流に乗った期待先行の投資にはワナもある。シェールブーム初期の投資は教訓だ。

もろ刃の剣にも

 会計不祥事が発覚した東芝。13年に得た米国産シェールガスの液化権益が経営の重荷となる懸念が高まっている。火力発電用プラントと一括で売り込もうとの皮算用が、原油安で裏目に出た。住友商事も米テキサス州での開発投資で採算が悪化して15年3月期にシェール関連で約2千億円の減損損失を計上。伊藤忠商事も25%出資していた石油・ガス開発会社の全株をただ同然で手放した。

 1990年代、1バレル20ドル前後で推移した原油は戦略物資でなく市場調達できる「商品」とみなされた。民営化の流れもあり調達の要だった旧石油公団も廃止された。エネルギー政策は市況や時代背景とともに揺れた。

 大震災の危機を経て再び訪れた原油安の時代。エネルギーの経済性と安定確保をめぐる新たな均衡点が求められている。

 稲井創一、中野貴司、古川英治、川合智之、大越匡洋、阿部哲也、金子夏樹、指宿伸一郎、中戸川誠、北爪匡が担当しました。



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