反発相次ぐ「一帯一路」投資 2018/07/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「反発相次ぐ「一帯一路」投資」です。





中国アリババ集団の馬雲会長は6月半ば、マレーシアへ飛んだ。親しくしていたナジブ首相が5月の総選挙で退陣に追い込まれたことで、今度はマハティール新首相に取り入ろうとしたのだ。

馬氏にはアリババを売り込むと同時に、中国とマレーシアの関係を取り持つ狙いもあった。マハティール氏が先に、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の広域経済圏構想「一帯一路」で、ナジブ氏が多くの中国国有企業と結んだ「不平等契約」を見直すと表明していたからだ。馬氏はマハティール氏が前回首相だった1990年代、その「素晴らしい才覚」に触発されてアリババを創業したと述べ、ナジブ氏にしたようにマハティール首相を持ち上げた。

一帯一路の旗振り役だったマレーシアが、中国による投資のリスクを世に示す先例とならぬよう、中国政府は馬氏の適応力と人を引きつける力を見習う必要がある。

中国の融資で港を建設し、返済に窮したスリランカ政府が昨年、港の使用権を中国国有企業に移譲せざるを得なくなった例もあり、一帯一路は周辺国への影響力拡大を狙う中国の債務のわなだという指摘が多い。マレーシアでもナジブ氏は国を売り渡しているとみて、国民が批判を強めていた。

マハティール政権は総工費140億ドル(約1兆5000億円)の東海岸鉄道建設や2本のガスパイプラインの敷設など、投資に見合う価値が見込みにくい複数の大型インフラ計画について、中国と再交渉すると明言している。

中国政府高官は自国企業が法に従い、政府も常に「相互尊重」と「互恵」の精神に基づいて行動しているという常とう句で応じた。だがマレーシアでは、自国政府に説明責任と透明性を求める国民の声が強く、中国は事業を進めるうえで言葉だけでなく、真の譲歩を求められるだろう。

軍事的威嚇や経済支配、見返りの示唆という手法を組み合わせ、これまで東南アジアで思い通りに振る舞い続けてきた中国政府にとって、他国の言い分を受け入れるのは不愉快なことだ。近年、習氏は南シナ海の領有権問題で断固譲らない姿勢を示し、この問題で中国と対立するマレーシアやフィリピン、ベトナムの主張はかき消されてしまった。しかし一帯一路が掲げる数千億ドルものインフラ建設には力の誇示ではなく、関係国の政府と国民の支持が欠かせない。

東南アジアでは最近、各地で中国の投資に対する反発が相次いでいる。ベトナムでは6月、経済特区の土地を外国企業に貸し出す政府の計画に大規模な抗議デモが起きた。住民は中国企業への優遇策だと感じ取っている。インドネシアでは中国と進める総工費55億ドルの高速鉄道建設が滞ったままだ。首都ジャカルタとバンドンを結ぶもので、土地収用が進まず、費用の妥当性に疑問符がついた。

マハティール氏は中国の投資と技術は歓迎するが、事業の費用対効果と透明性を確保し、マレーシアの企業と労働者が恩恵を受けられるようにしたいと語った。途上国で事業をする中国企業には難題だ。何千人もの従業員を現地へ送り、公的な監視も置かずに国家丸抱えで工事を進めているからだ。

ただ、マレーシアの動きは中国にとっては本気で国有企業を合理化し、周辺国と互恵精神で事業を進めようとしていることを示す好機ともいえる。

(6月25日付)



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