台湾、対米接近リスク鮮明に 中国刺激は当面回避 2017/1/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「台湾、対米接近リスク鮮明に 中国刺激は当面回避」です。





 【台北=伊原健作】台湾の蔡英文総統は中米4カ国歴訪を終え、15日夜台湾に到着した。経由地の米国では共和党議員らと関係を深めたが、留守中に中国の空母が台湾を1周するなど、中国側からの圧力は一段と強まる。対米接近のリスクが鮮明となり、蔡政権は米中とのバランスに腐心している。

 同日発表した談話は大半を中米に割き、米国については「短い滞在で重要な人物と対話できた」と触れるにとどめた。

 「トランプ次期米大統領の周辺とは会談していない」。7~15日までの9日間の外遊中、台湾では蔡氏とトランプ氏周辺との接触を伝える報道が相次ぎ、総統府は火消しに躍起になった。

 蔡氏は往路の経由地であるヒューストンでは共和党議員らと交流したが、帰路で立ち寄ったサンフランシスコでは目立った行動を避けて淡々と立ち去った。これ以上は中国側を刺激したくない意図が透ける。

 トランプ氏は13日に米紙とのインタビューで、中国大陸と台湾は一つの国に属するとする「一つの中国」政策の堅持を確約しない方針を示した。中国側が譲ることのできない原則を材料に、為替や通商政策の交渉を有利に進めようとしている。

 台湾の受け止めは複雑だ。蔡政権の基本路線は「一つの中国」原則を認めず、中台の現状を維持すること。トランプ氏の発言は一見、蔡氏の考えと合致するようにみえる。ただ蔡政権は「一つの中国」原則への認識を曖昧にすることで、中国との対話を探ってきた面もある。中国の矛先が台湾に向かえば、中台関係は一層緊張しかねない。

 中国には台湾の平和的統一の可能性が完全に失われた場合、武力を含む非平和的手段の行使を可能にする「反国家分裂法」がある。台湾は米国と関係を強化したい半面、「交渉カードとして使われればリスクを制御し切れなくなる」(与党・民主進歩党系のシンクタンク)との警戒が強まる。

 蔡氏の外遊出発から5日後の12日、中国軍の空母「遼寧」は中国大陸と台湾の間の台湾海峡を北上し通過した。昨年末に台湾沖の西太平洋を南下して南シナ海に入っており、一連の訓練で台湾を巻き込む形で1周した。

 12日には外交関係のないアフリカのナイジェリア政府から、同国にある台湾の代表機関の改称などを求められたことが明らかになった。「一つの中国」原則の影響で、台湾は21カ国としか外交関係を結べていない。日米を含め多くの国とは窓口機関を通じて非公式に実務関係を維持する。中国の圧力が非公式な外交領域にまで踏み込んできたとの懸念が強まる。

 蔡政権は当面、中国への刺激を極力避けるとみられる。ただ、民意は露骨な圧力に反感を強めており、政権が対中融和に転じる可能性は低い。

 昨年12月に現地誌「天下雑誌」が実施した世論調査では、中国との統一を容認・推進する意見は全体の1割にとどまる。中台の現状を維持する蔡政権の基本路線への支持は揺らいでいない。

 蔡政権は中国の空母に対抗する潜水艦など軍備の供与を米国に期待しているとされる。中国の反発を抑えつつ、これをどう実現するか。トランプ氏が中国との交渉で台湾カードをどう使うのか。米中台の駆け引きは東アジア情勢の火種となるリスクをはらむ。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です