土壌を鍛えろ(3) KIAIよりもAI 2018/06/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「土壌を鍛えろ(3) KIAIよりもAI」です。





「1000回の実験が2、3回で終わる」。ノーベル物理学賞受賞者、名古屋大学の天野浩教授は人工知能(AI)の威力に驚く。

(画像:研究にAIを取り入れた天野名古屋大教授)

成功体験捨てる

天野教授は1500回以上失敗しても実験を続け、青色発光ダイオード(LED)の開発につなげた。研究室に入り浸り、カップ麺で食事を済ますことも多かった。あきらめずに実験を繰り返した結果、ノーベル賞の成果が生まれた。そんな成功体験を捨て、研究スタイルの転換に挑む。

実験装置の内部で起きている現象がパソコンに表示され、手に取るようにわかる。大量の実験データをAIが学んだ成果だ。同じ名古屋大で共同研究する宇治原徹教授の技術にほれ込んで採用した。

実験は様々な条件がそろって成功する。その組み合わせは無数だが、AIを使えば試行錯誤をなくせる。天野教授はAIを武器に新たな省エネ半導体の実用化にトヨタ自動車やデンソーなどと取り組む。「2年で製造コストを100分の1にする」と意気込む。

日本人研究者は手先の器用さと忍耐力を生かし「KIAI(気合)」で成果を出してきた。野口英世のころから続き、ノーベル賞受賞者や候補といわれる研究者にもいる。天野教授や米カリフォルニア大学の中村修二教授がノーベル賞を受賞した際に「日本人は手を動かして実験しないとダメだ」という声が上がった。

しかしAIやデータ解析の技術革新で、実験をほとんどせずに成果を出せるようになってきた。愚直に試行錯誤を重ね、偶然の発見に頼る日本のやり方は、強みではなくなりつつある。

日本経済新聞がオランダの学術出版大手エルゼビアとAIの学術論文(12~16年)を調べたところ、影響力を示す引用回数で国内首位の東京大学でさえ世界では64位だ。カナダのベンチャー、エレメントAIによると、AIの国際学会で講演する第一人者約5400人のうち米国が過半数を占め、日本はカナダやドイツ、中国などより少ない。

人材育成が急務

巻き返すには、高度な知識を持つ人材の育成が欠かせない。国内では、滋賀大学が17年4月にデータサイエンス学部を初めて設置した。企業の関心は高く、開設から1年あまりで堀場製作所や京都銀行、伊藤忠テクノソリューションズなどと提携した。計画を2年前倒しし、19年4月の大学院新設を目指す。今春、広島大学や横浜市立大学も同様の学部をつくった。しかし、日本では学部の新設が難しく、ニーズがあっても動きは広がらない。

勤勉さを武器にかつて高成長を謳歌した日本だが、経済のデジタル化が進む中で、働き手のがんばりに頼るやり方では世界との競争に勝てなくなった。生産性向上に向け、研究現場にも「働き方改革」が求められている。

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