土壌を鍛えろ(4) 埋もれた「宝の山」 2018/06/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「土壌を鍛えろ(4) 埋もれた「宝の山」」です。





富士フイルムホールディングスによる米ゼロックス買収に反対する著名投資家カール・アイカーン氏は4月に公表した対案で、ある研究所をやり玉に挙げた。「ゼロックスは歴史的にパロアルト研究所の知的財産の収益化に失敗してきた」

(画像:パロアルト研究所のクルトグルCEOは「すべてを自分たちで発明するのは難しくなった」と語る)

企業の「黒子」に

レーザープリンターやマウスなど世界を驚かせる数々のイノベーションを生み出したパロアルト研。栄光の時代から転落し、そこから脱する名門の姿から日本の大学や研究機関が取り得る道がみえてくる。

「ゼロックスの研究部門から様々な企業の研究開発を後押しする組織へと姿を変えた」。パロアルト研のトルガ・クルトグル最高経営責任者(CEO)はこう話す。電気自動車の充電池を最適化するためのセンサー、投薬用の新たなスプレー技術……。パロアルト研は数多くの大企業や政府機関と共同研究を進め、その中には日本のJR東日本や大日本印刷も含まれる。

ゼロックスの一部門として開設されたのは1970年。米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が研究所の見学をきっかけにパソコン「マッキントッシュ」を作り出したとされる。

伝説となったこの逸話は、パロアルト研がパソコン市場という宝の山を見逃していたことを物語る。

栄光の時代は長くは続かなかった。2000年以降、目ぼしい成果は生み出せず、アイカーン氏に言われるまでもなく、ゼロックスにとって「宝の持ち腐れ」となっていた。

受託研究で稼ぐ

停滞の時代に学んだことがあった。「技術だけでイノベーションは生み出せない」。パロアルト研の大橋アキディレクターは語る。技術さえ開発すればニーズは付いてくるという発想を捨て、まずニーズを探す。パロアルトの名前が世界中から企業を呼び寄せる。

世界を見渡すと、この流れはパロアルト研に限った話ではない。日本政府が産学連携のモデルとするドイツのフラウンホーファー研究所は収入の3分の1を企業からの受託研究で稼ぐ。日本企業からも年20億円ほどを受け取る。裏を返せば日本の大学や研究機関が頼れる存在であれば得られていたはずの収益だ。

日本の研究所にもそのあり方を見直す動きが出ている。「どこでも好きなよう飛び回るよう推奨している」。日立製作所研究開発グループ基礎研究センタの山田真治センタ長は基礎研究を担う研究者に発破をかける。同社は北海道大学や東京大学など全国の有力大学に研究者を常駐させる。京都大学の常駐者は近隣の神社を訪ねては地域社会の課題や研究のヒントを探る。

社会のニーズは研究室にはない。企業や消費者が求める技術を開発するには、日本の大学や研究機関も大胆に進む道を変えていく必要がある。殻に閉じこもっていては何も生み出すことはできない。

(電子版「ベル研の模索、所長が語る」▼トップ→トピック一覧→連載企画)

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