地価上昇は本物か(下) まだら模様の地方 交通整備・子育て支援カギ 2016/03/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「地価上昇は本物か(下) まだら模様の地方 交通整備・子育て支援カギ」です。





 佐賀県伊万里市で唯一の百貨店、伊万里玉屋は1月31日、売り上げの減少に歯止めがかからずに49年の歴史に幕を下ろした。老朽化した5階建ての店舗や4000平方メートル弱の敷地の今後の活用は決まっていない。

佐賀県伊万里市で唯一の百貨店「伊万里玉屋」の閉店が決まり、地価も下落した

 2016年の公示地価で商業地として全国2位の前年比7.6%の下落率となった地点は伊万里玉屋近くの中心商店街にある。人通りはまばら。郊外にできた大型店に客が流れ、かつてのにぎわいを失っている。

 商業地の下落率が7.4%で全国5位の地点があった島根県中心部の山間地にある川本町は西日本旅客鉄道(JR西日本)が表明した三江線の廃止検討に揺れる。広島県三次市と島根県江津市を結ぶ三江線は利用客の減少が目立つ。実際に廃線となれば、地価を一段と押し下げかねない。

 日本有数の漁港を持つ静岡県焼津市の沿岸部の住宅地は8.9%下落し、全国で最大のマイナス幅を記録した。人口減少に加え、東日本大震災によって津波被害への警戒が地価にも響いている。県土地対策課は「県民の防災意識が高く、津波被害想定の更新などに反応しやすい」と説明する。焼津市の内陸部では代替需要で地価が1%強上昇する地点もあり、地域内で選別が進む。

 今回の公示地価では三大都市圏は全用途で1.1%上昇したが、地方圏は0.7%下落。地方が地価回復で出遅れている構図だが、地方の中では二極化が強まっている。

 札幌市の高級住宅地、円山地区。市営地下鉄の西28丁目駅から地上に出ると、建設中のマンション群が目に飛び込んでくる。工事現場の囲いには「京阪電鉄不動産」「東急不動産」など大手資本の名がずらりと並ぶ。この近辺の調査地点では上昇率が15.9%となり、全国2位となった。

 北海道内で人口集中が進む札幌市の住宅地は地価の水準は東京や大阪に及ばないが、上昇率は全国の2~7位を占めた。これらは市営地下鉄や昨年12月に環状化した路面電車の駅から徒歩数分の地点が大半だ。

 群馬県太田市では商業地が0.6%上昇し、24年ぶりにプラスに転じた。市内に工場を置く富士重工業や同社の下請け各社の好業績の影響が大きいが、それだけではない。「子育て支援が土地取引にも影響を与えている」(不動産鑑定士の津久井伸昭氏)という。例えば同市内の小学校で児童を夕方まで預かる独自の取り組みを始め、夏休み中も受け入れる。

 熊本県では住宅地が19年ぶりに上昇した。地元不動産会社の担当者は「県外からの転勤族の増加が地価を押し上げた」と説明する。ホンダが昨年からミニバイクの生産をアジア諸国から戻し、ソニーの半導体子会社は生産能力を引き上げた。

 人口減少社会では全国おしなべて地価が上昇していくような理想的な姿にはなりにくい。地方では企業誘致や交通インフラの整備、子育て支援などを通じ、地域人口を増やし、地元経済を活性化することがカギになる。



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