地銀異変(5) 活路は原点の「草の根」 2018/06/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「地銀異変(5) 活路は原点の「草の根」」です。





6月19日、京都市東山。築200年の京町家で営業する喫茶店「市川屋珈琲」を訪ねた。店主の市川陽介(44)がいれる一杯を求め、若い女性や外国人観光客らがのれんをくぐる。市川は祖父の自宅だった京町家を改装し、念願の店を持った。開業資金は、京都信用金庫の「京町家専用ローン」で借りた。

(画像:喫茶店の市川屋珈琲は京都信金の町家融資で開業できた(京都市内))

「ぜひ買いたい」。京都信金には、市内に4万軒ある京町家を欲しがる客が訪れる。専用住宅ローンは7年前に始め、平均2千万円程度を120件融資したヒット商品に育った。

普通の地方銀行からみれば、古い木造の京町家は、土地を除いて担保価値はない。一方、京都の街並みをつくる文化的な価値があり、飲食店や住宅としていかせば収益をうむ潜在力を持つ。京都信金はこんな無形の価値をみて商機をつかんだ。「京町家を守りたい」。個人ローンセンター所長の水谷英一(60)は今年、外国人にも貸した。京都の街づくりを引っ張る。

鹿児島の第二地方銀行、南日本銀行。取締役の市坪功治(56)は6月、支店長時代の経験を記者に打ち明けた。銀行員を務めながら家屋清掃店で働き、自転車で街を駆けずり回った。

2008年のリーマン・ショック後に経営難に陥り、09年に150億円の公的資金を受けた。背水の陣の銀行が11年度から始めたのは、疲弊した地元経済の再生という原点回帰だった。行員が地元の顧客企業の仕事を手伝い、企業が収益目標を達成すれば、銀行は数%の報酬を手にできる。地元が息を吹き返せば、いずれ銀行の取引も厚くなる。南日本銀行の貸出金利回りは2%あまりで大手地銀の2倍超。長い目で見た収益改善をめざしている。

「データで勝負する」。肥後銀行執行役員の神谷英文(53)は6月、星座が重なったような画像を眺めていた。熊本県で5割近い融資シェアを持ち、顧客間の取引を「見える化」した新技術。資金を必要とする取引先をいち早くつかめる。16年の熊本地震で効果を発揮し、復興の資金需要にすばやく対応できた。技術革新の成果を地元に還元し、ともに成長したいという。

第二地銀の前身の相互銀行は、鎌倉時代に自然発生した「無尽」が源流。地域で掛け金をためて融通しあう草の根金融だ。寄って立つ地元を離れ、大都市の不動産融資や海外投融資に走る姿からは、新たな成長戦略は見えてこない。

(敬称略)

亀井勝司、中村雄貴、高見浩輔、玉木淳、南毅郎が担当しました。



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