変わる中国地方in out 移住・定住を増やす(4)地域の特色、仕事の種に 2017/06/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「変わる中国地方in out 移住・定住を増やす(4)地域の特色、仕事の種に」です。





住まいとなる空き家の選択肢が整備され、子育て支援策が充実していても、その地で生活の糧を得る「職」がなければ移住には踏み切れない。自動車や造船など製造業が根付き、中国山地や瀬戸内海といった自然に恵まれる中国5県。その「地の利」を生かした仕事に居場所を見いだし、新天地を求めてこの地域に移住する若者が増えている。

設計受託で起業

船舶や浮きドックなど海洋構造物の建造には強度計算や図面作製が不可欠。今年2月、こうした設計の初期段階で必要な作業を受託するフロントミッション(広島市)を立ち上げた山口太一社長は山形出身だ。

長崎の大学で造船技術を専攻し、東京の総合エンジニアリング企業に就職。船舶・海洋構造物の設計に必要な計算書や図面作製などのノウハウを身につけた。就職して5年余り、独り立ちを志した時、思い浮かべた移住先が広島だった。

広島県を含む瀬戸内地域は古くから造船業で栄えてきた。「広島は『造船業の聖地』という認識だった」と山口社長。「造船所が集積していて、様々な仕事ができそうだという期待があった」と振り返る。

東京・有楽町にある広島県への移住相談窓口「ひろしま暮らしサポートセンター」を訪れ、地元企業の紹介など手厚い支援体制を実感。昨年末に退職し、居を広島に移した。「実績を積み重ねながら、地元企業に信頼されるようになりたい」とこれからの事業展開に意気込みを隠さない。

日本政策金融公庫がまとめた2016年度の中国5県へのUIJターン創業融資実績は57件で前年度から24%増えた。特にIターン創業は23件と前年度の13件から大きく伸びた。「その地域だからこそ」の仕事があることが、縁もゆかりもない人を引きつける。

集成材製造の銘建工業(岡山県真庭市)には今年、7人の大卒社員が入社、そのうち5人が県外からの就職だ。学生を引きつけるのは同社が注力する直交集成材(CLT)と呼ばれる新たな建材の開発だ。

CLTは木の板の繊維方向が交差するように何層も重ねた集成材。日本では16年からCLT関連の建築基準法が施行され、一般利用がスタートしたばかり。今後、校舎やビルといった大規模建築物への活用が期待されている。同社は16年に国内最大規模のCLTの量産工場を稼働させるなど、CLT活用の先駆的な役割担っており、次世代の木造建築に興味がある学生にとって魅力的に映る。

移住者の目線で

地域の課題が、新たなビジネスを生み出す原動力にもなる。地方の水産事業者と東京はじめ消費地の卸売業者がインターネット上で直接、魚介類の売り買いができる流通サービス「ポータブル」(広島市)の板倉一智社長は鳥取の出身。漁業従事者の所得減や高齢化など、故郷の水産業衰退にかねて危機感を抱いていた板倉社長は11年、結婚を機に東京から広島に移った。

大手運送会社で得たノウハウや鳥取、広島などの水産事業者の声を踏まえ、「地方の水産事業者の販路を広げ、地方漁業の魅力向上・活性化を支援したい」と16年に起業、アイデアの事業化に乗り出した。移住者の目線が生む新規事業が衰退する地域産業に再興を促す刺激となっている。



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