変わる大学入試(上)「脱日本型」模索 欧米、予算も人手も桁違い 2016/04/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「変わる大学入試(上)「脱日本型」模索 欧米、予算も人手も桁違い」です。





 文部科学省の有識者会議が大学入試改革の最終報告をまとめた。2020年度の新テスト導入を目指すものの実現にはなお課題が多い。入試はどうなるのか。改革の行方を探る。

個性重視で選抜

 「高校生活や将来の目標を評価してもらえた」。東京大学初の推薦入試の工学部合格者として今月12日に入学式を迎える鈴木敦己さん(18)は笑顔を見せる。

 福島県出身。5年前の東日本大震災と福島第1原子力発電所事故で変わり果てた故郷に胸を痛め、人と人をつなぐ街づくりの必要性を感じるようになった。同県郡山市で過ごした高校時代は、中国の同世代との交流団体でも活動した。

 柔軟な思考、異なる背景の人々とのコミュニケーション――。工学部が求めた学生像は鈴木さんの関心と合致。「多様な社会問題を建築の視点から解決したい」。これまでの経験で培った夢を提出書類に書き込み、面接でも訴えた。

 大学を活性化させるため、多様な能力や個性を重視する。東大の推薦入試の狙いは、20年度から始まる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」などが目指す国の改革とも重なる。

 一発勝負の筆記試験で受験生をふるいにかけてきた日本の大学入試。世界に視野を広げる若者たちも違和感を抱き始めている。

「知識だけでは…」

 米国・マサチューセッツ州。山中ゆんさん(19)は一橋大を1年生の夏に退学し、教養教育で全米最高峰とされるアマースト大で学ぶ。知識の定着を測る試験は何度も受けられ、エッセーで意欲や個性をみる米国流の入試は、将来をじっくり考える機会にもなった。「知識量だけでは対応できない時代なのに日本の入試は今のままでいいの?」

 山中さんが卒業した東京都立西高校は毎年30人前後を東大に輩出する一方、2年前から米ハーバード大などへの見学ツアーを行う。宮本久也校長は「スポーツで才能のある若者と同じように、勉学が優秀な生徒は海外も見据える」と話す。

 東大などが手厚い入試による異才発掘に乗り出した背景には国際競争力の低下への危機感もある。だが欧米の一流校は先を行く。

 「入学者1人の採用コストは2231ドル(約25万円)」「学部定員3200人を選抜するため、毎年1万人以上を面接する」。2月に大阪大で開かれたシンポジウム。米ドレクセル大と英オックスフォード大の担当者が報告すると、会場にため息が広がった。

 専任スタッフをそろえる欧米の一流校に対して、日本の大学の多くは教員が入試業務を兼任する。参加した国内の大学関係者は「入試にかける予算も人手も桁違いだ」と話す。

 国立大学協会は書類や面接などで選考するAO(アドミッション・オフィス)や推薦の合格者の割合を現在の15%程度から30%にする目標を掲げる。だが現場からは「教員の負担が重い」(東北大の担当者)との声が上がる。東大も3%の推薦枠を「広げる予定はない」(幹部)。

 意欲や個性ある高校生を丁寧な選抜で受け入れる。「脱日本型」に向けてわずかに開いた風穴を広げる模索は始まったばかりだ。

(次回から社会面に掲載)



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