外食「大量出店」に限界 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「外食「大量出店」に限界」です。





半世紀近くにわたって日本の外食チェーンを育んできた「大量出店」という黄金レシピに、限界が見えてきた。看板ブランドを津々浦々に出店し、なじみ感や安心感で集客やコスト削減につなげ、デフレ下で威力を発揮してきた。だが「ガスト」「すき家」といった1000店を超えるチェーンでも、今や出店は年10店程度。市場の飽和や人手不足が、方針転換を迫っている。

(画像:リンガーハットはサラダ中心の新業態を試す)

おしゃれ志向へ

「見た目もおしゃれでおいしそう」。高級住宅街の東京・広尾のサラダ専門店「エブリボウル」が今春の開店から、若い女性客中心ににぎわっている。客が「五穀」「国産小麦」といった麺、ソース、野菜などを自由に組み合わせて1皿をつくる店で、1000円程度。健康志向の需要をとらえて、リピーターも多い。来店だけではなく、持ち帰りも4割にのぼる。

実はこの店、外食大手リンガーハットの新業態だが、看板や店内に表示はない。「できるだけリンガーハットの店だと思われないようにした」(川内辰雄執行役員)だけあって、客のほとんどは気がつかないだろう。

2019年2月期に10年前の約20倍、33億円の営業利益を見込むリンガーハットは外食の「勝ち組」とされる。それでも秋本英樹社長は「1つのブランドだけで生き残っていけるか」と危機感を抱く。長崎ちゃんぽん店「リンガーハット」は全国に約660店あり、この5年で130店あまりを積み増したが、人口減を背景に郊外店の集客は厳しさを増し、閉店も相次いだ。都市部は不動産賃料の上昇などで、採算確保のハードルが上がっている。

打開策を探るべく始める3つの新業態の1つがエブリボウルだ。新ブランドならちゃんぽん店が飽和状態の好立地の都市部でも、出店ができる。

半世紀にわたって看板店を大量に出す戦略を推し進めてきた外食チェーンが、岐路に立っている。すかいらーくの主力業態、ファミレスの「ガスト」は業界最多の1400店舗を誇るが、最近の出店ペースは年10店舗程度。ゼンショーホールディングス(HD)が運営し、牛丼最多の「すき家」も国内の2千店弱に対して新店は年10店ほど。

大量出店で規模を拡大して仕入れコストを抑え、さらに値下げの原資に使う。この循環は1990年代以後のデフレ時代で威力を発揮した。日本マクドナルドは90年代後半に年400店舗ペースで出店し、02年には59円バーガーで旋風を巻き起こした。ゼンショーHDは牛丼業界の値下げ競争をリードしながら、12年3月期に過去最多の200店以上を出店した。

多くの外食チェーンにとって「主力業態の大量出店こそ成長の原動力」(国内証券)だった。外食業のフランチャイズチェーン店の数は過去30年、多少の増減はしつつ連続での減少は06~08年度が目立つ程度だった。

営業短縮で増収

市場の飽和に加えて、ここに来て外食各社の出店にブレーキをかけたのは、人手不足だ。飲食物調理の有効求人倍率(含むパート)は約3.2倍と、95年の統計開始以来の高水準。大量出店に必要な人の確保がもはや難しくなっており、ビジネスモデルを抜本的に変える必要に迫られている。

「人がやる必要がない仕事はロボットで置き換える」。吉野家ホールディングスの河村泰貴社長はこう言い切る。同社やゼンショーHDでは、理系人材の採用に力を入れ、省力化にかじを切っている。吉野家HDは17年春、自動で食器を洗い、種類ごとに積み重ねるロボットをメーカーと共同開発して導入した。

業態転換や自動化のほかに、あえて身を縮めることに解決の糸口を見いだした例もある。ロイヤルホールディングスはファミレス「ロイヤルホスト」で17年、営業時間を平均80分短縮したが、浮いた人手を稼ぎ時の昼食や夕食の時間帯に手厚く配置。既存店が6億円の増収となった。当初は7億円の減収を予想していた。菊地唯夫会長は「外食業界は運営の改善の余地は大きい」と語る。

外食が戦う相手は人口減や人手不足だけではない。スーパーやコンビニエンスストアが力を入れる「中食」とも、胃袋を奪い合う。賞味期限が切れる前に新しいビジネスモデルを見いだすことができるか。

(栗本優、平嶋健人)



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