多面鏡 加速する米国の原油増産 天然ガスから開発シフト 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「多面鏡 加速する米国の原油増産 天然ガスから開発シフト」です。





 10年前に、米国が1世紀ぶりの石油ブームに沸く光景を想像できた市場関係者がどれほどいただろうか。2011年から急速に上向いた米国の原油生産は足元で勢いを増す。

 米エネルギー省の統計で米国の原油生産量(付随ガスは含まず)は、11月15日までの4週平均が日量792万バレルまで増加し、戦略備蓄向けを除く原油の平均輸入量(760万バレル)を逆転した。国内生産が輸入を上回るのは、1994年春以来、19年半ぶりだ。

 米国の原油生産は大恐慌に沈んだ29年に初めて10億バレルを超え、70年に記録した35億バレルまで増え続けた。だが、月間で3億1千万バレル、日量換算でちょうど1千万バレルを記録した70年10月が産油国としての米国のピークだった。

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 資源枯渇で日量500万バレルを割り込むようになった04~06年には、だれもが米国の原油生産はこのまま衰退し続けると考えた。

 しかし、その時に別な変化が進行していた。米国の住宅バブルを背景にした世界同時好況と、中国をはじめとする新興国の台頭だ。

 国際市場では急増する需要に対し、供給不安が高まる。天然ガスの急騰に続き、08年には原油も1バレル147ドル台の史上最高値を記録した。価格高騰が増産と技術開発を後押しする市場機能が働いた。それが「シェール革命」である。

 テキサス州の8月の原油生産はもっとも落ち込んだ07年2月の3倍、ノースダコタ州は94年2月の13倍に急増した。ただ、急角度で立ち上がる増産には天然ガスからの開発シフトが影響している。

 住友商事エネルギー本部長として米国でのシェール事業に取り組んだ住友商事総合研究所の高井裕之社長は「メタン成分のドライガス、エタンなどを含むウエットガスともに供給過剰で採算が悪化し、掘削リグは油田の開発に移動した」と話す。

 採算ラインは100万BTU(英熱量単位)4ドル前後のシェールガスに対し、シェールオイルは1バレル70ドルほどとされる。開発企業のヘッジ売りで長期先物の20年12月取引は80ドル台を割り込んだが、余裕はある。

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 原油生産の増え方を目の当たりにすれば天然ガスのような自給達成シナリオも頭に浮かぶものの、現状では否定的な見方が多い。

 高井社長は「資源量の豊富な天然ガスと異なり、米国でのシェールオイル開発は4~5年で頭打ちとなる」と指摘する。さらに、米国で生産が増えているのはWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油と同類の軽質で低硫黄の油種だ。

 「米国も精製設備の多くは中質油種に合わせてつくってあるため、国内生産が増えても一定量は輸入せざるをえない」(英石油情報会社、アーガス・メディアの三田真己日本代表)

 米国の原油相場は輸入や製品の輸出入を通じ国際市場とつながっている。「天然ガスと違い、米原油相場だけが急落するシナリオも考えにくい」(三田代表)。少なくとも相場が70ドル台を下回れば採算が悪化し、開発や生産は停滞する。

(編集委員 志田富雄)



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