大機小機 「時」が中国を追い越した 2015/08/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 「時」が中国を追い越した」です。





 「時は中国の味方なのか」と題し本欄に書いたのは4年前だ。当時、リーマン危機後の低迷にもがく先進国を尻目に、4兆元の景気対策で素早く立ち直った中国は、称賛の的だった。

 経済規模で米国を抜く日も近い、軍事力でも追い上げ、「やがて中国が世界をリードする」という論者も現れた。そんな「中国は前途洋々」説に異を唱えた。人口構造の変化や、世の趨勢である情報化と共産党一党独裁体制の相性の悪さなどを、理由にあげた。

 中国の人口構成は、生産年齢人口がピークアウトし人口ボーナスが人口オーナス(重荷)に転じた。農村部の余剰労働力が底をつく「ルイスの転換点」を過ぎたことも、急な賃金上昇=国際競争力の低下を招く。

 フェイスブックも、ツイッターも、ユーチューブもブロックされる情報鎖国体制は、習近平政権下で、むしろひどくなった。最近では、有害と認定された若者に人気の楽曲120曲がネットから消え、天津の化学爆発事故でも厳しい検閲が行われた。

 経済のバージョンアップに不可欠な技術革新は、情報化・ネット化を抜きに語れない。開放性が命の情報化を邪魔すれば、イノベーションは損なわれる。

 「社会主義市場経済」体制の“護持”が情報統制の目的だろうが、共産党独裁と同義の「社会主義」と、自由・開放を指向する「市場経済」の継ぎ目の亀裂は時とともに深まる。

 「時は中国の味方ではなく、時が中国を追い立てているのが実相だろう」と4年前のコラムを結んだが、上海株や人民元相場の異変は「時」が中国を追い越した証左ではないか。

 改革の指針はあった。例えば3年前、世界銀行と国務院発展研究センターが共同でまとめた「中国2030」リポート。「中所得国のワナ」を避ける手立てを示した同報告が、第一に勧めたのは「市場経済への移行の完遂」だった。

 政府はモノを提供するのではなく、システムやルールの提供者に役割を変え、重要産業を牛耳る非効率な国有企業(銀行も)のリストラを急ぎ、競争領域を広げて、市場化を貫けと。

 ところが、習政権下で国有セクターの改革は遅々として進まず、しびれを切らした「市場」が反乱を起こした。責任はひとえに「政治」にある。

(手毬)



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