大機小機 オランダ病を克服した労働改革 2016/04/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「」です。





 近年、仕事と生活の調和を図るワークライフバランスの必要性が指摘されるなかで、オランダの取り組みが注目されている。オランダでは1980年代以降の労働市場改革によって、パートタイムとフルタイムの均等待遇が整備され、働く時間を選択する自由度が飛躍的に高まった。その結果、短い勤務時間でも十分な所得を得ることが可能となり、雇用を分け合うワークシェアリングの仕組みが定着した。

 特に女性はパートタイムや自宅勤務を選択することで、家族を大切にしながら所得を増やせるようになった。より注目すべきなのは、低迷していたオランダ経済が、この改革を通じて活力を取り戻したことである。仕事と私生活の充実による相乗効果で活力を回復させた経験は、オランダ・モデルとして他の先進主要国からも注目されている。

 ただ、改革の出発点に「オランダ病」と呼ばれた不況があったのは忘れてはならない。天然ガスの大生産地であるオランダでは70年代に天然ガスの輸出が大きく増えたが、自国通貨の高騰や労働者賃金の上昇で製造業の国際競争力が大きく低下した。国内経済は失業率が急上昇し、深刻な危機に見舞われた。こうした状況下で始まったのが一連の労働市場改革で、ワークシェアリングが劇的に進み、同時にオランダ病も克服していった。

 意外に思われる方が多いかもしれないが、オランダは化石燃料資源に恵まれており、石油や天然ガスを生産する。特に天然ガスは欧州諸国の中でロシア、ノルウェーに次ぐ産出国だ。ただ、国を潤すはずの天然ガスの恩恵が国民全体に行き渡らず、オランダ病を生み出していた。ワークシェアリングは国民が仕事を分け合い、国を潤す恩恵を全体に行き渡らせる仕組みであったといえる。

 もっとも、オランダの成功例を見習って日本でも同様の改革を行うべきだという主張は、やや短絡的になる。日本は先進主要国のなかで最も天然資源に乏しい国で、分け合う恵みは限られる。これまで日本の成長を支えてきたのは勤勉な人的資源の存在であった。今後の労働市場改革においても、こうした日本の実情を踏まえることが肝要で、そのうえでどのような働き方が望ましいのかを考えていく必要がある。

(甲虫)



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