大機小機 スマートパワーを欠く中国 2015/07/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 スマートパワーを欠く中国」です。

中国がぶち当たっている壁を明快な論理で説いたこの大機小機、秀逸な記事です。





 7月上旬、パリで開かれたジャパンエキスポは例年通りの大盛況だった。イタリア・ミラノの食をテーマにした国際博覧会でも日本館には長蛇の列ができた。日本のソフトパワーの面目躍如である。同じことを中国が試みても、ここまでできるだろうか。

 中国は、中国語と中国文化を広めようと世界に数百校の孔子学院を設置しているが、受け入れ国ではむしろ警戒感を呼ぶ。ノーベル平和賞に対抗し孔子平和賞を設けたものの、これも海外からは失笑ものだ。

 中国人旅行者のマナーに眉をひそめ、本国の政治・行政で想像を絶する腐敗が横行し、国土が有害な大気に覆われていては、世界の憧れになりようがない。

 他方で中国経済は赤信号が点滅する厄介な段階に入った。少なからぬ省が数%の低成長にあえぐ。個人消費はさえず所得格差が縮小する気配もない。政府の強い管理に基づく市場経済は限界に達した観がある。

 しかも国富が増して人々の価値観が多様化しているのに、共産党一党独裁体制を堅持しなければならないという矛盾を抱えている。株式市場の大きな混乱は、こうした不条理なシステムの象徴に他ならない。

 中国のハードパワーは経済規模、軍事力、人口、国土面積から見て明らかに米国に次ぐ。外交も米国との新大国関係の模索や「中国の夢」の追求、新シルクロード(一帯一路)構想の推進などフル回転である。だが、その拡張主義は東南アジアや日本と摩擦を引き起こす。アジアインフラ投資銀行(AIIB)も本来はソフトパワーを軸とすべきだが、中国が行うとハードパワーになってしまう。

 米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が主張するように、国力はハードパワーとソフトパワーを掛け合わせたスマートパワーで決まると思う。

 中国が今以上にハードパワーを強化しようとすると抜き差しならない摩擦を起こしかねない。ソフトパワーを高めるしかないが、そのためには民間部門の公正で自由な競争、人々の思想・表現の自由が確保されなければならない。

 数年前、中国は文化体制改革の断行を言いはやしたが、その内容自体がハードパワー的だ。これではいつまでたっても中国が真の意味で超大国になることは難しい。

(鵠洋)



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