大機小機 人民元と金融センター 2016/06/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 人民元と金融センター」です。





 中国・人民元の国際化が着実に進んでいる。昨年秋に国際通貨基金の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用されたことが象徴的だ。中国政府は、人民元クリアリング銀行の設置、クロスボーダー人民元決済システム(CIPS)の運用開始など、次々と布石を打っている。

 人民元ビジネスで日本は大きく後れを取った。香港やシンガポールに劣後するのはまだしも、英独の背中すらみえない。東京外国為替市場の人民元取引高はロンドンの100分の1、人民元建て債券の残高はドイツの30分の1にすぎない。

 他方で、中国との貿易金額は英国の4倍近く、ドイツの約2倍になる。しかも中国は日本の隣国だ。金融面の遅れは、いかにも不自然である。

 人民元が米ドルに代わる国際基軸通貨になることは当面なかろう。中国の通貨政策は管理された変動相場制で、急速な市場化は選択肢にない。しかも今の中国は基軸通貨国としての諸負担を抱えこめるほどの圧倒的な超大国ではない。ブレトンウッズ体制を構築した時の米国の国内総生産(GDP)は、世界の60%近かった。昨今の中国のシェアは16%程度にすぎない。

 日本は人民元と円の協業に注力すべきだ。円はSDRの構成比で人民元の後じんを拝したとはいえ、実質的には世界3位の通貨だ。

 日中間の人民元決済は増加しているが、国どうしの金融提携は4年前の円・元直接決済の取り決め以降、大きな進展がない。海外の主要都市に設置された人民元クリアリング銀行は東京にない。外交問題などですっきりしない環境が続いてきたが、割り切って対処すべきだ。

 起爆剤として東京国際金融センター構想がある。その中核に人民元ビジネスを位置付け、中国の発行体による人民元建て債券を東証プロ債券市場に積極的に上場させていくことが一案だと思う。CIPSに加盟する邦銀の数を増やすのも有意義だ。訪日中国人向けのリテール金融の提供、資産運用サービスの充実にも挑戦したい。

 人民元と円との互換性を円滑にすることは円の国際化にも資する。中国には日本との距離を縮めようとの意識が高まっている。国際金融センター構想に人民元をいかす絶好のタイミングである。

(鵠洋)



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