大機小機 人民元安定の時代は終わる 2015/08/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 人民元安定の時代は終わる」です。





 ドルなどに自国通貨を連動させる外国為替の管理相場は、最終的にはことごとく失敗してきたのが戦後の歴史である。

 1997年のアジア危機はその典型だ。タイやインドネシアなどドルに連動した為替制度を持つ国の通貨が売られ、各国は相次いで変動相場制に移行した。欧州通貨制度から脱落する結果になった92年の英ポンド危機も構図は同じだ。

 ポイントは経済や金融の基礎的な条件に反するほど高く固定された通貨は売り浴びせられること。堅固と思われた管理制度もいったん弱点が見えれば、防御は難しいということだ。

 今回の中国の人民元の切り下げや市場の実勢にあわせた基準値の設定という決定は、過去の経験に照らすと危ういものに映る。

 切り下げ前の人民元が過大評価されていたのは間違いない。米国経済は改善が続き、利上げも近い。それとは反対に中国は経済が減速し、金融緩和も進めている。ドル高・元安が進みやすい状況は整い、実際、市場取引では人民元が売られ資本逃避も起きていた。

 米英日などは危機後に大規模な金融緩和をしたが、その効果の一つは明らかに通貨安だった。管理相場の中国では金融緩和をしても通貨安の利益は得られないというジレンマもあった。

 不自然な人民元高に耐えられなくなったのが今回の中国当局の措置であり、ある意味では妥当な判断ともいえる。元の国際化をにらみ、市場の実勢に合った為替制度への改革を考えてきた中国人民銀行の方針にも合致するし「輸出減少を元切り下げで和らげられないか」と考える政治の思惑にも応えられるものだった。

 しかし、問題がこれで収束するとは思えない。決定内容が中途半端だからだ。市場参加者は、堅固と思われた管理相場にひびが入り始めたと感じ、かつてのアジア通貨やポンドのようにさらなる売りを仕掛ける可能性がある。

 クルーグマン・プリンストン大教授は最近、「人民元を切り下げるならもっと大幅にすべきだった。理にかなうのは変動相場制への移行。ただその場合、元は大幅安となり、米国との摩擦が増すが、中国指導者にその準備ができているとも思えない」と指摘した。

 真夏の人民元ショックが一過性で終わる保証は全くない。

(冬至)



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