大機小機 内部留保課税が問うもの 2017/10/19 本日の日本 経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 内部留保課税が問うもの」です。





 この週末の衆議院選挙を巡り内部留保課税が改めて議論の俎上(そじょう)に上った。経済界は「内部留保課税は二重課税である」として反対している。そもそも留保利益は法人税等を支払った後に残った利益の集積であるという訳だ。

 また、我が国の法人税負担は諸外国より高いとの経済界からの声に配慮して、2015年度には32.11%であった法人実効税率が来年度には29.74%にまで軽減される減税措置と整合性がないとの声もある。

 財務省の統計によると、内部留保総額は07年度には269兆円であったが、年々着実に増加し、16年度には406兆円に達している。また、現預金は07年度の135兆円が16年度には211兆円にまで積み上がった。最近のシンクタンクの分析では上場企業の約6割が実質無借金経営である。

 しかし、なぜ今内部留保課税なのか。

 かねて「企業の6重苦」といわれた事態に対して、法人税減税や円高対策、そして日銀の超緩和策の継続など、政府や中央銀行はプロビジネス政策を続けてきた。それにも関わらず、企業はリスクをとって事業を展開するとか、従業員への還元を増やすとか、また配当増や自社株消却で株主に報いるといった行動につなげず、ただ単に何かあった時のためにと利益や現預金を蓄積するだけであった。

 現に設備投資の水準は1995年以来横ばいであり、労働分配率は2001年の75%から67%に下がってきている。そのことへの政策当局者の不満や憤慨が背景にあると見てよかろう。

 かつてケインズが唱えたアニマルスピリットが日本の大企業の経営者から消えてしまい、何かあった時に身を守るためという「保身の経営」がまん延してしまったのだろうか。

 そういえば、今の大企業経営者は、70年代の学生時代、社会問題に関心が薄いノンポリと称され、学生運動に参加しなかった「リスクを取らない優等生」が多いのかもしれない。

 経済のダイナミズムをつくる主役は民間事業者であり、政府はその環境を時代に合うよう整える役割にすぎない。内部留保課税の議論で真に問われているのは、わが国の経営者にアニマルスピリットをいかに取り戻すかということなのだ……情けないことに。(万年青)



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