大機小機 出光興産の新株発行を巡って 2017/7/26 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 出光興産の新株発行を巡って」です。





 出光興産は20日付で、既存の1億6000万株の30%に当たる4800万株の新株発行を完了した。昭和シェル石油との経営統合について、経営陣と対立していた創業家側の持ち株比率は、33%台から26%台に低下したとされる。創業家側は新株発行の差し止めを求めたが、裁判所は認めなかった。この結果は驚くに値しない。

 会社法は、定款で定める株数の上限(出光の場合は4億3600万株)までは、取締役会決議での新株発行を認めている。取締役会の判断で株主の持ち株比率が低下することは、法が予定するところであり、手続きや価格が正当であれば、株主が新株発行を差し止められるのは、著しく不公正な方法による発行の場合に限定されるからだ。

 その判断に当たり、判例は「主要目的ルール」と呼ばれる基準を採用する。会社に資金需要がある場合は、副次的に他の目的があっても差し止めを認めないことを原則としている。

 もちろん、資金需要があっても、金融緩和局面では銀行借り入れの方が合理的だという考えもある。しかし、裁判所は、資金需要をどう満たすかの判断には、安易に介入すべきではないと考えているようだ。

 本件では資金需要の存在に加え、創業家側の影響力低下が限定的であることも、差し止めを認めなかった裁判所の判断の背景にありそうだ。棄権者が一定数存在する上場会社の株主総会で、経営統合のための特別決議を否決するために33.4%の議決権が必要なわけではない。創業家側の26%超の持ち株比率は、市場からの株式買い増しによっても、数%の株主を味方につけることによっても、経営統合議案を否決することができる数字だ。

 また、創業家側の反対が功を奏しなかった場合には、創業家側による株式買い取り請求権の行使もあり得る。裁判所は、差し止めを認めなかったからといって、「著しく不公正」と評価できるほど、経営陣の立場が強くなるわけではないと考えたのだろう。

 新株発行は、創業家のみならず、全ての既存株主の持ち株割合を低下させた。経営陣は近い将来、自社の企業価値が新株相当分の30%以上増加することを株主に約束したとも言え、重い責任を負ったことを忘れてはならない。

(腹鼓)



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