大機小機 成長と分配の両立 2016/05/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「」です。





 一秒に数千回の取引ができる時代に数日前の話題など旧聞に属するのだろうが十分な余韻はある。バフェット氏のアップル株買いだ。理解できないものには投資しないと言ってきたが「配当総額世界一」よりわかり易いことはないのだ。

 日本でも株主還元意欲の旺盛な企業が人気だ。還元比率の高い銘柄なら多少の割高には目をつぶるという傾向も顕著で、一過性の施策でないとの期待から増配企業が特に注目される。

 高配当で下値リスクが乏しい銘柄は高金利商品に等しく、金利がマイナスに沈む海に投げられた救命ブイのよう。投信マネーも国富ファンドも似た行動を取り、長期増配企業を束ねた米国の配当貴族指数などは最高値を塗り替えた。

 「利子は正真正銘の犠牲に報いる報酬ではない」と言ったのは経済学者のケインズだが、株式に金利の代替を求める投資は、経済成長の原動力となるアニマルスピリットに満ちた行動とは真逆に映る。

 投資家側にも言い分はあるだろう。生活の必需品が不足する時代はものをつくれば売れ、さらにものづくりの管理を競う時代へ変わった。ここまでは投資評価しやすかったが、今やコンセプトやパッケージ化で競う時代だ。伊勢志摩サミットで披露された自動運転車一つとっても社会を変える革新なだけに覇権の姿はまだすっきり見通せない。投資すべき価値のありかに確信を持てないのだと。

 しかしながら配当は所詮あくなき価値創造への投資にギブアップした結果の残滓(ざんし)の一部にすぎない。配当を求める個々の投資戦略が合理的でも、ここに安住していては全体の経済成長は遠くなる。

 自己資本利益率(ROE)や過去最高水準の株主還元額からも明らかなように、企業と投資家の対話は資本戦略面では一定の成果を挙げた。問題は事業戦略を共にどう支えていくかだ。「成長の果実なくして分配を続けることはできない」とは一億総活躍プラン案のくだりだが、株式市場の課題も同じである。

 企業が社員をつなぎとめる報酬制度のように、投資家が配当という黄金の手錠(ゴールデンハンドカフ)につながれ、選別眼も働かせず目先の分け前を求めるだけであれば、経済全体の稼ぐ力を総力で高められる気がしない。

(記恩)



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