大機小機 消え入る「妥協の芸術」 2016/06/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 消え入る「妥協の芸術」」です。

海外ではスタンダードとなっている消費税は、日本国民にはなじまないように思われます。所得税の源泉徴収に慣れ、痛税感というものを強く感じたことのない時代が長く続いたからです。ましてや、長く続いたデフレによる節約志向に加え、人口減、モノ余りの時代感覚や痛税感もあいまって、消費が伸びる要素はありません。

ここは消費税を段階的に廃止し、所得税で税をしっかり確保すること、一方で消費するほど税負担が軽くなる仕組みに転化するのが良いと考えます。





 安倍晋三首相は2017年4月に予定されていた消費税率引き上げを再び延期することを決めた。当初は15年10月の予定だったが、その約1年前に1回目の延期を決定、衆院を解散した。再延期が公約違反とされるゆえんだが、首相は「新しい判断」が決断の理由だと説明している。

 「新しい判断」の一つが「世界経済が危機に陥るリスク」だという。確かに世界経済の長期停滞の可能性も指摘される。それはリーマン・ショックのような突発型危機というより、慢性病に近いようにみえる。

 処方箋として安倍首相が打ち出そうとしたのは財政刺激策で協調する「世界ケインズ政策」。主要7カ国(G7)首脳会議でお墨付きは得られなかったが、金融緩和への依存が限界に達したアベノミクスがケインジアンに変節し、財政出動に軸足を移すことになる。

 なぜ大げさに「危機」を演出してまで増税を再延期するのか。選挙優先、政権延命の思惑が語られるが、見え隠れするのは消費税に対する政治の恐怖感である。幾多の政権が消費税を巡って倒れてきた歴史の前に足がすくむのだろう。

 「所得」への課税は、パナマ文書騒動で分かる通り税逃れとの戦いになる。抜け穴を探す余裕があるのは特権的富裕層だ。一方、消費段階で課税する消費税は「多く消費する人=金持ち」の推定が働き、意外に公平感がある。欧州で付加価値税が浸透する理由もここにある。しかし直接税の存在感の大きい日本でこの感覚は共有されない。

 今回の政治プロセスで失われたものに「税と社会保障の一体改革」に関する3党合意がある。12年、民主党(当時)の野田佳彦首相、谷垣禎一・自民党総裁、山口那津男・公明党代表が社会保障充実のため消費増税が必要と確認した。

 「政治は妥協の芸術」と言われ、3党合意はその一例だった。だが安倍政権も、与党に先立ち増税延期を打ち出した野党の民進党も合意を自ら無にした。

 米国のトランプ現象を持ち出すまでもなく、政治から忍耐が失われ、威勢のいい憂さ晴らしの言辞がはびこっている。成長の果実から遠い大衆の不満が渦巻くなか、政治の神髄である「妥協の芸術」は風前のともしびだ。安倍首相が見せつけるのは、そんな憂鬱な現実である。

(三剣)