大機小機 物価目標から名目成長目標へ 2015/10/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 物価目標から名目成長目標へ」です。





 アベノミクスの「新3本の矢」は評判が芳しくない。従来の3本の矢の検証もせずに、政策の裏付けのない目標を掲げるのはいかがなものかというわけだ。たしかに問題は多いが、評価できる点もある。物価目標から名目成長目標に転換した点である。

 今年1月28日の本欄で筆者は「物価目標より名目成長目標を」とし、3%の名目成長目標を提案した。原油安で日銀の掲げる2%の物価目標は実現が遠のいた。物価目標に固執し金融緩和が行き過ぎればツケは大きくなる。物価目標2%は世界の常識だが、米連邦準備理事会(FRB)でさえ、物価目標にこだわらず利上げを模索している。

 原油価格下落は物価を下げる一方で、成長底上げ効果がある。物価目標にこだわるより物価上昇と成長を合わせた名目成長目標を政府、日銀が共有する方が経済の現実に沿っている。

 新3本の矢の名目国内総生産(GDP)600兆円という目標は、名目3%成長を実現すれば2020年度には達成できる計算だ。

 物価から名目成長への転換は、金融緩和依存から成長戦略重視へのリバランス(再均衡)である。問題は目標をどう達成するかである。新3本の矢の「一億総活躍社会」には内向き思想が潜む。それを超えてアジア太平洋を中心にグローバルな視野に立たない限り、新目標の実現は難しい。女性や高齢者の活用を含めた自前主義で労働力は維持できるか。人材の国際開放を真剣に考えるときだ。

 環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意は前進だが、グローバル戦略としては不十分だ。中国が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)と結合して初めて、アジア太平洋の成長基盤ができあがる。法人税率の引き下げや規制緩和とあわせて、成長戦略をグローバルな視野から練り直すことが肝心だ。

 もちろん名目成長目標には落とし穴がある。成長による税収増をあてにして財政規律が緩む恐れがある。成長なしに財政再建は不可能だが、先進国最悪の財政赤字を抱える日本は成長だけでは財政再建できない。消費増税と徹底した歳出合理化に取り組むしかない。

 成長と財政再建を両立できなければ日本の未来は危うい。名目成長は甘い夢より厳しい現実を克服するための目標である。

(無垢)



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