大機小機 科学立国の危機 2016/12/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 科学立国の危機」です。





 近年、日本人のノーベル賞受賞が続き、日本の科学力を示しているといわれる。2010年以降だけでも9人の受賞者がいる。しかし、今年受賞した大隅良典氏は、近年の日本の科学技術予算の低迷と、若手研究員や大学の研究者が置かれている状況に危機感を抱き、今後、日本の研究力は落ちると警告している。

 実際、若手研究員のほとんどは任期が数年で、毎年契約更新をしなければならず、給与水準も低い。日本学術会議によれば、生命系のポスドク(博士研究員)の場合、40%が年収400万円以下で、40代半ばでも500万円程度だ。

 キャリアパスも不安定で常勤の研究職に就ける割合は非常に低い。職を得てもすぐ次の職探しに追われ、不安定なポスドクを一生続ける人もいる。民間も博士受け入れに消極的である。 理由は2つだ。大学など研究機関の予算が毎年削減され常勤ポストが減り、数年程度の有期雇用ばかりが増えている。そのため常勤ポストは大変な競争だ。また、1990年代から大学院重点化の名のもと、学部定員を減らして大学院の定員を増やし、博士課程の院生数は2.5倍になった。

 入り口の大学院の定員を増やしても、出口のポストも予算も減らせば、研究が進展するはずがない。落ち着いて独創的な研究などと言ってはいられず、早く目に見える成果を出そうと、目先の研究、はやりの研究に飛びつく。

 国際的評価という要求がこの傾向に拍車をかける。手っ取り早く国際的評価を高めようとすれば、手軽なのが米国ではやっている研究の修正だ。これでは米国の研究の引用数を増やすだけで、独創的な研究など絶望的だ。

 これは、アベノミクスでの雇用の拡大と同じだ。消費も投資も国内総生産(GDP)もほとんど増えていないのに、雇用だけが増えている。数だけ増やしても質の劣化が起こる。企業なら、単純労働に非正規雇用を割り当て、コスト削減を図ることに意味もあろう。しかし、独創性を要求する研究職にこの方法はもっとも適していない。

 独創的な研究者を育てたいなら院生の数を抑え、その後のポストを増やして、落ち着いて研究させるべきだ。研究環境を悪化させて、独創的な研究を期待できるはずがない。

(魔笛)



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