大機小機 米大統領の貿易観は間違いだ 2017/1/21 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 米大統領の貿易観は間違いだ」です。





 米国のトランプ新大統領は、中国、日本などとの貿易収支が不均衡(米国が赤字)であることを大きな問題と認識している。しかし、この考えには大きな誤りがある。

 そもそも一国の貿易収支の赤字を是正すべきだとする経済理論は存在しない。貿易収支の均衡を政策目標に掲げている先進国もない。「貿易収支が赤字だから、経済パフォーマンスが悪化する」という関係は全く見られないからだ。

 まして、米中・日米貿易収支のような2国間の不均衡を是正すべきだという経済理論などあるはずがない。一国の輸出先国と輸入先国の構造は異なるのだから、2国間の収支が均衡しないのは当たり前である。

 もっと根本的な懸念もある。トランプ氏は1月11日の記者会見で「我々は良い交渉(ディール)ではなく、悪い交渉を行ってきた」としたうえで貿易収支不均衡の話を持ち出している。どうやら、貿易交渉の目的は輸出を増やすことなのだから、貿易赤字は悪い交渉をしてきた証拠だと考えているのだろう。

 さらに貿易赤字のことを不均衡(インバランス)とも赤字(デフィシット)とも言わず、損失(ロス)と表現した。「我々は毎年、何千億ドルもの損をしている」と言い、中国や日本、メキシコなどとの貿易関係を取り上げた。

 トランプ氏は、あたかも企業を経営するような目で貿易を見ている。中国や日本に支払う金額が受け取る金額より大きいから「損失」と考え、これらの国との「ディール」をやり直して損失を減らそうとしているようだ。

 貿易を商売の目で見るのは非常に危険だ。商売の上では輸出(収入)はプラス、輸入(支出)はマイナスだが、貿易の世界で輸入はマイナスではない。

 例えば、日本は大量の石油を輸入しているが、これが途絶えたら経済は大混乱する。欲しいと思うから輸入しているのであり、いやいや輸入しているわけではない。

 世界をリードする超大国の新しい指導者が誤った経済認識を持っていることは、世界にとって大きな懸念要因だ。これほど経済学的に間違った考えはないのだから、米国の経済学者は新大統領が認識を変えるように力を尽くしてほしい。

(隅田川)



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