大機小機 英国の交渉術 2016/06/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 英国の交渉術」です。





 欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国の国民投票がまもなく始まる。直近の世論調査によれば、離脱賛成派と反対派は僅差だ。投票の結果に全世界が注目している。

 過去数十年、英国と大陸欧州との経済的な結びつきは飛躍的に高まった。仮にEU離脱となれば、この大きな流れに逆行する。

 議論の背景には移民問題を巡る感情のもつれや英国内の政治闘争があり、EU離脱は経済面では悪影響のみだという論調が大半である。離脱が現実になれば世界の金融の中心であるシティーの地位は揺らぎ、欧州向けの輸出拠点を期待して英国に投資した外国企業も戦略の見直しを迫られる。短期的には世界経済の大きな波乱要因となる。

 もっとも、これまでも英国はEUと一定の距離をとり、それがもたらす恩恵を得てきた。確かにEUは域内の経済統合度を高め、米国に次ぐ経済圏に発展した。同時に域内の数多くの規制が自由な経済活動を阻害するという不満が内外にある。自由を重んじる英国人にも、規制を大陸欧州から押し付けられることへの反発がないわけではない。

 実は英国は1992年に欧州共通通貨ユーロの前身であるERM(欧州為替相場メカニズム)から離脱した。その際には英ポンドが急落し、当初は英国経済への深刻な悪影響が懸念された。だが、その後の英国経済はむしろ好調であった。ポンド下落が輸出産業にプラスに働いたうえ、規制の多い大陸欧州と区別した経済政策が繁栄を導いたのである。

 欧州域内の関係は、はた目で見るよりはるかに複雑だ。過去何世紀にもわたり、何度も軍事衝突を繰り返した国々の統合である。経済面に限っても、必ずしもすべての国が納得する形で進んではいない。そのなかで英国は、もともと独仏など大陸勢と一線を画しつつ、関係を強めてきた。

 したたかな英国人にとっても今回のドタバタ劇はさすがに誤算が多かっただろう。しかし域内外を問わず、EUとの交渉には常にしたたかさがいる。EUとのEPA(経済連携協定)交渉が難航している日本も、英国の交渉術から学ぶべきことは少なくない。合意ありきでの交渉では足元を見られる。交渉には、ときに「離脱」の脅しが必要なのである。

(甲虫)



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