大機小機 需要不足と実力不足の混同 2016/05/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 需要不足と実力不足の混同」です。





 またぞろ景気対策、消費増税先送りを求める声が高まってきた。その背後には、景気低迷が長引いているという認識があるようだが、本当にそうなのか。

 確かに、日本経済が著しい低成長にあるのは事実だ。去年はマイナス成長が2四半期もあり、一時期2%近いと言われた昨年度の成長率も1%割れで終わったとみられている。アベノミクス3年間でマイナス成長は5四半期、平均成長率は僅か0.7%だった。

 だが、それが直ちに不況を意味するかと言えば、そうではない。経済運営の基本は雇用のはずだが、労働市場は完全雇用を通り越して深刻な人手不足状態にある。有効求人倍率に至っては、バブルの真っただ中と同じ水準なのだ。企業収益も、製造業大企業で頭打ち感が出てきたとはいえ、全体としては過去最高水準にある。この状態で、世界でも断トツの政府債務を抱える日本が財政出動すべきだとは到底思えない。

 一見矛盾するようだが、この謎を解く鍵は日本経済の実力を示す潜在成長率にある。団塊世代の退職に伴う働き手不足は、既婚女性や高齢者の労働参加で、頭数は何とか埋め合わせている。だが、増えているのは短時間労働者ばかりなので、人数×時間でみた労働投入はほとんど増えていない。おまけに労働生産性まで下がっているのだ。

 このため、日本の潜在成長率は日銀推計で0.2%、内閣府推計で0.4%まで低下した。内閣府の数字は毎年下がり続けていて、成長戦略が機能していないことを証拠付けている。潜在成長率が0.5%未満であれば、低成長が続くのは当たり前ではないか。

 ラフに言えば、景気は実際の成長率と潜在成長率の差であり、潜在成長率を上回って成長すれば景気は良くなる。民間調査機関による今年度の成長予想は1%弱だが、潜在成長率は明確に上回っている。

 個人消費の伸び悩みが強調されることが多いが、潜在成長率がゼロ近傍にあり、円安の影響もあって労働分配率は下がっている。だとすれば、消費が力強く伸びる方が不思議だろう。昨今は、世界的な財政出動を説く議論も高まっているが、混同してはいけない。海外の問題は需要不足だとしても、日本の本当の問題は実力不足なのだ。(希)



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