大機小機 EUを試す文明の融合 2016/01/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 EUを試す文明の融合」です。





 欧州連合(EU)は戦後最大の試練に直面する。ユーロ危機が小康状態を迎えたかと思えば、パリがイスラム過激派のテロに見舞われた。シリアからの大量の難民受け入れで域内のあつれきが高まり、移動の自由という土台が揺らぐ。中東危機がEUを覆う。

 フランスでは排外主義の極右勢力が勢いを増す。英国ではEU離脱を問う国民投票が年内にも実施される。深刻なのはEUのリーダー、メルケル独首相が難民受け入れを巡って批判にさらされていることだ。

 EUは分裂し崩壊に向かうのではないかという悲観論さえある。しかし、これは間違いである。2度の世界大戦という悲惨な歴史を経て創設されたこの平和の連合は、パリ市庁舎の紋章にある通り「たゆたえども沈まず」なのである。

 EUには危機バネが作用する。ユーロ危機は深刻だったが、銀行同盟創設など再統合につながった。財政統合への論議も高まった。震源地であるギリシャを含めユーロからの離脱は最初からありえなかった。

 米国が「世界の警察官」を降りた主役なき世界で、EUはグローバル・アクターとしての役割が一段と求められる。地球環境危機からウクライナ危機など地政学リスク打開までEUの存在感は大きい。アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る中国との連携はEUのしたたかさを物語る。

 もちろん英国がEUを離脱する事態になれば国際政治を揺るがすが、これは「賢い英国」の選択ではない。EU離脱はスコットランド独立に直結し「グレート・ブリテン」は「リトル・イングランド」に転落する。外資に依存した英経済は外資撤退で窮地に陥る。ロンドン・シティーは金融センターの座をフランクフルトに奪われるだろう。

 EUにとって最大の問題は、キリスト教文明を基盤に拡大してきた「大欧州」がこのまま単色の共同体として存続できるのかという点である。EUは既に域内にイスラム社会を抱えている。排外主義が激化し「文明の衝突」につながるのが最悪のシナリオである。それは何としても防がなければならないが、「文明の共存」を超えて「文明の融合」にまで深化させられるかどうかが問われている。

 それは多様な文明を抱える米国やアジアを含め世界共通の課題だ。

(無垢)



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