失望招いた未完の理想 オバマ政権8年 2017/1/12 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「失望招いた未完の理想 オバマ政権8年」です。





 「エ・プルリブス・ウヌム(多様から生まれた統一)」。米国の国章や硬貨には、ラテン語でこう刻まれている。13州が団結し、英国からの独立を勝ち取った歴史を象徴する言葉だ。オバマ大統領はこの言葉を好んだ。「チェンジ(変革)」や「ひとつの米国」という自身の理想を重ね合わせていたのだろう。

 イラク・アフガニスタン戦争とリーマン・ショックで疲弊し、政治や人種の分断に悩む米国。リベラルで国際協調を重んじるオバマ氏はその再生を託された。

 未曽有の金融危機に見舞われた米経済は、世界経済を引っ張るところまで持ち直した。イランの核開発阻止に向けた包括合意やキューバとの国交回復などもオバマ氏の遺産といえる。

 だが現実の壁は厚かった。若くして頂点に上り詰めたがゆえの経験不足。崇高な理念は語れても、与野党の合意形成に汗をかけない性分。オバマ氏が変革と融和に指導力を発揮できなかったのは否めない。

 「指導者としての情熱よりも、法学教授の論理に頼りがちだ」。パネッタ元国防長官はオバマ氏の弱腰外交を痛烈に批判した。米国はもはや「世界の警察官」ではない。そう言い切ったすきを突かれ、ロシアや中国、過激派組織「イスラム国」(IS)の増長を許したとの非難は免れない。

 米経済の成長に不可欠な税制改革や移民制度改革は滞った。共和党と民主党のみならず、富裕層と貧困層、白人と非白人の亀裂も修復できずに終わった。

 米ギャラップによると、オバマ政権下で「進歩した」との回答が「後退した」を上回ったのは、19分野のうち4分野。性的少数者の待遇やエネルギー、気候変動、経済だけにとどまる。オバマ氏に対する国民の期待が大きかっただけに、その失望もまた深かった。

 エネルギー問題の大家ダニエル・ヤーギン氏は「ブッシュ前大統領への不満がオバマ氏の台頭を呼んだように、オバマ氏への不満がトランプ次期大統領の旋風を招いた」と指摘する。

 オバマ氏は10日の演説で「相違点を超えて結束し、民主主義を維持するのが重要だ」と訴えた。グローバル化に背を向け、社会の分断をあおるトランプ氏は確かに危うい。それを憂うなら、未完に終わった理想を退任後も説き続ける責任がオバマ氏にはある。

(ワシントン支局長

小竹洋之)



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